⧉ 会社設立
会社設立のメリット・デメリット
<会社設立のメリット>
@ 社会的信用が高くなる
A 税率がほぼ一定
B 役員報酬を支給できる
C 節税策が豊富
<会社設立のデメリット>
@ 設立費用がかかる
A 会計や税務申告などの手続が複雑となる
<会社設立と個人事業との比較>
@ 起業時の手続
株式会社等では、定款作成認証や登記の手続が必要ですが、個人事業では、税務署への開業届のみです。
A 当初の費用
株式会社設立の手続は、自分で行っても25万円程度かかりますが、個人事業では0円です。
B 申告手続
株式会社等では、税理士を付けずに行うのは困難です。個人事業では、自分一人でも可能です。
C 節税
株式会社等では、さまざまな節税対策がありますが、個人事業では、節税策に乏しいです。
D 資金調達
株式会社等では、比較的融資を受けやすいですが、個人事業では、どちらかといえば融資を受けづらいです。
E 営業面
株式会社等では、社会的な信用があるため有利な場合が多いようですが、個人事業では、不利な場合が多くなります。
4つの会社の形態と特徴
会社の種類には、「株式会社」「合同会社」「合名会社」「合資会社」の4つがあります。
かつては、有限会社というものがありましたが、2006年の会社法施行に伴い廃止され、有限会社の新設はできなくなりました。
ビジネスにはイメージが重要
会社の種類を決めるにあたっては、周囲に与えるイメージが重要な決定要因となります。合名会社や合資会社は以前からありますが、信用やイメージの面では有利に働くとはいえません。また、社会的認知度も高くはありません。合同会社は、会社法により創設された新しい会社の種類ですが、こちらも認知度に欠けるといえます。
一方で、株式会社はポピュラーな会社形態であり、取引先等に安心感を与えます。日本で設立される会社の多くは、株式会社の形態をとっています。
会社設立は簡単?
2006年の会社法施行以前は、最低資本金規制があり、株式会社は1,000万円以上、有限会社は300万円以上の資本金を準備する必要がありました。また、株式会社の役員は、取締役3名以上、監査役1名以上の就任が求められていました。
しかし現在では最低資本金規制はなく、役員も取締役1名で大丈夫になりました。
法人形態 | 株式会社 | 合資会社 | 合同会社 |
---|---|---|---|
設立に必要な最低人数 |
1名 |
2名 |
1名 |
・合資会社、合同会社の社員とは出資者のことであり、一般的な社員(従業員)とは異なります。
・公証役場における定款認証手数料は、資本金額に応じて変動します。
・電子定款の場合、印紙税の4万円は不要です。
取締役会の設置
役員は取締役1名でも大丈夫
取締役、監査役などを株式会社の役員といいます。株主が1人で、経営者でもあるような小さな会社では、監査役も会計参与も置かず、取締役1人でも構いません。会社法においては、取締役が1人の場合でも、その取締役は「代表取締役」として登記されます。
代表取締役は1人とは限らない
取締役が1人の場合、その取締役が代表取締役です。取締役が複数の場合、その中から1人を代表取締役に選任するのが一般的であり、取締役会を設置する場合には、3人以上の取締役の中から、取締役会の決議により代表取締役を選定しなければなりません。なお、代表取締役は1人に限られるわけではなく、取締役全員を代表取締役にすることもでき、取締役全員が会社を代表することになります。
取締役会の設置は任意
取締役会を設置するか否かは、任意に選択できます。ただし、取締役会を設置する場合には、取締役は3人以上必要で、監査役又は会計参与も置かなければなりません。よって、最低でも4人の役員を確保しなければなりません。取締役会を設置することで、よりしっかりした会社であるとの印象を与えることができます。しかし、家族経営的な株式会社で手続を簡素化したいのであれば、取締役会を設置しない方がよいでしょう。
株式会社は、決算終了後通常3か月以内に株主総会を開催しなければならない。
取締役会非設置(招集手続が簡単) | 取締役会設置(招集手続は、一定のルールに従う) |
---|---|
● 定款に「前日まで」と書いてあれば、株主総会の前日に、「明日、株主総会を開催します」と招集をかけても問題ありません。(書いていなければ1週間前に案内する) |
● 株主総会の議題は、事前に株主に知らせなければならない。 |
会社設立の準備
会社を設立するにあたって、どのように準備を進めていけばよいのか解説していきます。
個人の印鑑登録
会社の発起人と役員は個人の実印が必要になります。実印を登録していない場合は、お住いの市区町村役場にて実印登録をしてください。
公証役場で | 法務局で | 取締役に就任するとき |
---|---|---|
公証人に認証してもらう定款には発起人全員の実印を押し、印鑑証明書を1通ずつ添付しなければなりません。 | 登記書類である「印鑑届出書」に設立時の代表者になる取締役の実印を、会社実印の下に押印し、印鑑証明書を1通添付する。 | 取締役又は代表取締役に就任する際には、就任承諾書に実印を押します。 |
会社の実印をつくる
会社の実印は、登記するまでに作成しておきます。会社実印以外にも、銀行印・角印・ゴム印などが必要になります。
【会社の実印】
● 一般的には二重丸の内側に「代表取締役印」などと刻んであります。
● 一般的に二重丸の外側を会社名が囲んでいます。
● 大きさは1cm以上の正方形以上で3cmの正方形に収まるもの。
※会社の実印は、法務局に登録します。
【銀行印】
● 内枠に「銀鉱之印」などと彫られています。
※法人名義の口座開設や小切手の発行の際に使用します。
【角印】
● 規格はありませんが、会社名の入った印鑑。
※請求書や領収書等の発行の際に押印するもの。
【ゴム印】
● 会社の住所・代表者名・電話番号等が記載されたスタンプ。作成する場合は、(株)など省略したものではなく、正式なものを作成すること。
契印 | 割印 | 捨印 |
---|---|---|
文書が2枚以上になるときや別紙があるときに、それらが一体のものであることを示したり、後から、用紙を抜き差しできないように、ページの両側にわたって押すもの。 | 契約書の原本と写しなど同じ文書を2部以上作成したときに、それぞれの同一性又は、関連性を示すために、双方の文書にまたがって押すもの。 |
後で文書の文字を訂正する必要が生じたときに備え、書類の空白の場所にあらかじめ押しておくもの。後で内容の改ざんの恐れがあるので、相手が信頼できないときは押さない。 |
発起人が会社をつくる
会社をつくろうと言い出した人が発起人です。1人でも複数でも構いません。1人で設立する場合は、発起人(出資者・株主)=設立時取締役=代表取締役になります。複数人で設立する場合は、発起設立に加え、募集設立という方法もあります。
発起設立は、家族や友人などがお金(出資金)を出し合って会社の株式を全部引き受け、かつお金を出した全員が発起人となる設立方法です。一方、募集設立は、広く一般の人たちから出資金を募り株式を引き受けてもらう方法です。
【株主の有限責任】株主は、会社の事業が万一失敗しても、持っている株式の価値がゼロになるだけで、会社の負債を抱える義務はありません。このことを株主の有限責任といいます。
本店所在地を決める
本店の所在地とする場所に制限はなく、どこに置いても問題ありません。ただし、原則として、本店所在地が納税地となり、所轄の税務署、都道府県事務所、市区町村役場が決まります。
会社設立後に本店を移転すると、変更登記をしなければならず、その際に費用もかかります。同一法務局内であれば登録免許税が3万円、異なる管轄の法務局へ移転すると、旧本店所在地の法務局に3万円、新本店の所在地の法務局に3万円を支払わなければなりません。
本店や事務所を決める場合には、ご自身でチェックポイントを考え、事業の内容や用途も踏まえ、慎重に選ぶ必要があります。
会社の事業年度を決める
会社が儲かっているかどうかを判断する区切られた一定期間を事業年度といいます。事業年度は1年以内であれば自由に決めてよいことになっています。だからといって3か月といった短い期間にすると手間がかかって大変です。一般的には、1年と決めている会社がほとんどです。そして、事業年度の最後の日が「決算日」となります。決算日までの事業収入や経費などを計算して税金の申告書を作成します。決算日から2か月以内に税金を納付しなければなりません。
4月1日〜翌年3月末日までを事業年度としている会社が多いですが、決算日は自由に決めよいので3月末日にこだわる必要はありません。むしろ事業の閑散期を決算にする方が、作業的には楽な場合もあります。しかし、納税と資金繰りに配慮をしたほうがよいです。例えば、法人税の納付期限は決算日から2か月以内ですが、賞与やその他の支払時期と重なると出ていくお金が多くなり、資金繰りが苦しくなる可能性も考えられます。また、売上の多い月の前月を決算日とすることで、売上の多い月にかかる税金の納税を翌年にまわすことができます。
会社の名称と事業目的は早めに決める
会社名は「商号」といい、一度決めたら簡単には変えられませんので、慎重に検討してから決めてください。会社名は、会社の顔となるべきものです。長すぎたり、短すぎたり、また会社名だけで何をしている会社なのかを判断できるほうが、よりいいと思います。
以前は類似商号の規制があり、同一市区町村内に同名や似たような名前の会社が存在する場合には、その社名を使うことはできませんでした。しかし、現在では同じ住所で同じ名前の会社でない限り登記は受理されるようになりました。ただし、登録商標など他の法律にひっかかる可能性がありますので注意が必要です。
● 定款に記載すべき事業目的は、ある程度書き方が決まっています。
● 管轄の法務局の担当官の判断で決まる。
● 事業目的の表記は、広く一般に認知されているものでなければならない。
● 今までにない新しい業種などは、事前に法務局に相談するほうがよい。
● 事業目的にやるつもりもない「金融業」と書いてしまうと、銀行からの融資が受けられない場合があります。
● 許認可事業を行う場合は、定款の目的記載に十分注意が必要です。記載がないと定款変更をしなければならない可能性もあります。
資本金の額を決める
会社法の施行により、資本金は1円からでも問題なくなりましたが、実際には会社の信用に影響することからある程度の金額は必要になります。また、業種によっては一定の資本金額が許認可事業の許可要件となっていますので確認が必要です。さらには、外国人の方が会社を設立する場合、のちに在留資格を取得する際に、個人の出資額の規定があります。
資本金は、設立後の事業資金となります。また、会社の債権者の債権を担保するものとなります。資本金額によって税金が異なりますので、ある程度慎重に決めた方が良いと思います。
定款作成
定款とは
会社の基本的ルールを決めたものです。会社を設立する場合には必ず作成しなければなりません。株式会社の場合、作成した定款については公証人の認証を受けなければなりません。(合同会社の場合は、公証人の認証は不要です。)
定款には、絶対的記載事項・相対的記載事項・任意的記載事項があります。
絶対的記載事項 | 相対的記載事項 | 任意的記載事項 |
---|---|---|
■ 目的(会社法27条1号) |
■ 現物出資 |
■ 定時総会の招集時期 |
株式会社は定款で自社の発行できる株式数の上限を決めますが、まず、設立時には発行可能株式総数の少なくとも4分の1は株式を発行することが義務付けられています。(公開会社のみの規制)そして、会社設立後は、この発行可能株式総数の枠内で、会社の所定の手続を経て、自由に株式を発行して資金調達を行うことができるようになっています。
定款の認証
株式会社の場合、作成した定款は公証役場で公証人の認証を受けなければなりません。本店所在地を管轄する法務局又は地方法務局所属の公証人が取り扱います。例えば、本店が埼玉県に所在するのであれば、埼玉県内の公証役場であればどこでも構いません。
<紙で作成した定款認証の場合>
定款3通 | 発起人の印鑑証明書 | 出席できない発起人がいる場合は委任状 |
---|---|---|
● 公証人保管用、会社保管用、登記申請用の3通を用意 |
● 発起人全員の印鑑証明書1通ずつ | ●定款認証は、発起人全員で公証役場へ出向かなければなりません。当日、出席できない発起人がいる場合は、その者の委任状が必要になります。 |
収入印紙 | 公証人への手数料 | 実質的支配者となるべき者の申告書 |
---|---|---|
● 4万円の収入印紙が必要です。(貼らずに持参する) |
● 定款認証手数料は5万円です。当日、現金で支払います。 |
● 実質的支配者となるべき者の申告書を作成し、持参する。 |
出資の履行
資本金の払込み
発起人は設立時発行株式を引き受けた後遅滞なく、それぞれが引き受けたかぶしきのついて全額の払込みをし、現物出資であればその財産の全部を給付しなければなりません。金銭の払込みは、発起人間で定めた払込取扱場所で行うことになります。
※払込取扱場所とは、あらかじめ決めた発起人の金融機関の個人口座
発起人のうち出資の履行をしていないものがある場合には、発起人は、当該出資の履行をしていない発起人に対して、期日を定め、その期日までに当該出資の履行をしなければならない旨を通知しなければならない。この通知は、当該期日の2週間前までに行うものとされています。この期日までに履行がないと、その発起人は設立時発行株式の株主となる権利を失います。
設立登記
会社の実態を作成した後、会社の内容を商業登記簿に記して公示することを「会社の設立登記」といいます。この登記によって会社は法人格を取得します。
登記の手順と効果
@ 登記の手順
定款の認証が終わった後の登記の手続は以下の通りです。
a.登記申請書の作成
b.添付書類の作成
c.法務局への登記申請
d.補正があれば補正
e.登記完了
A 登記申請のルール
(当事者申請主義)
株式会社の設立登記は、代表者(代表取締役等)や代表社員が、所定の期間内に、本店所在地を管轄する法務局において申請をすることとされています。代理人に依頼する際は、委任状が必要になります。
(書面主義)
全ての書類を書面で作成し、法務局へ申請しなければならないというルールです。持参の場合は持参した日、郵送の場合は書類が到達した日が会社設立日となります。
B 登記される事項とは
会社設立の際に登記される事項は、下表のとおりです。記載される事項は、投資家や債権者などに幅広く公示する必要がある重要なものばかりです。会社設立後、登記事項に変更があった場合、必ず変更登記をしなければなりません。もし行わなかった場合には、法律で処罰される可能性があります。
・商号
・本店所在地
・公示する方法
・事業目的
・発行可能株式総数
・発行済み株式総数
・資本金の額
・株式の譲渡制限に関する規定
・役員の氏名
・代表者の氏名及び住所
・株式会社、合同会社
・株式会社、合同会社
・株式会社、合同会社
・株式会社、合同会社
・株式会社のみ
・株式会社のみ
・株式会社、合同会社
・株式会社のみ
・株式会社(取締役)、合同会社(業務執行社員)
・株式会社(代表取締役)、合同会社(代表社員)
登記が完了すると、@ 会社の成立、A 株式引受けに関する無効・取消しの制限、B 権利株の譲渡制限の解除、C 株券発行の許容・強制といった効果が生じます。
会社の成立は、登記の完了によって、株式会社は法人格を取得することになり、その結果、発起人に形式上帰属していた会社関係の権利義務が、形式・実質ともに当然に成立した会社に帰属することになります。
会社設立後の各種届出
会社設立登記が完了したら、各官庁への届出を行います。届出に関しては、「税金に関するもの」と「労務に関するもの」の2種類になります。
税金に関する届出
【税務署へ提出するもの】
●法人設立届出書
会社設立から2か月以内に必ず提出します。
●給与支払事務所等の開設届出書
給与支払事務所等を開設したとき、開設から1か月以内に提出します。
●源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
源泉所得税の納期の特例を受ける場合、納期の特例を受ける月の初日までに提出します。
●青色申告の承認申請書
青色申告の承認を受ける場合、設立から3か月以内に提出します。
●消費税課税事業者選択届出書
消費税の課税事業者を選択する場合、設立第1期の終了日までに提出します。
●消費税簡易課税制度選択届出書
消費税の簡易課税を選択する場合、設立第1期の終了日までに提出します。
【都道府県税事務所へ提出するもの】
●法人設立届出書
必ず提出しなければなりませんが、提出時期は市区町村によって異なります。
提出時は2部提出し、控えに受領印を押印後、返却してもらいます。
労務に関する届出
【年金事務所へ提出するもの】
●健康保険・厚生年金保険新規適用届
会社設立をした場合、会社設立から5日以内に提出します。(加入義務あり)
●健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
会社設立時又は新規に従業員を雇用したとき、会社設立又は入社日から5日以内に提出します。
●健康保険被扶養者(異動)届
被保険者に扶養する者がいて、扶養に入れる場合は速やかに提出します。
●国民健康保険第3号被保険者資格取得届
被保険者に被扶養配偶者がいる場合、第3号被保険者に該当してから14日以内に提出します。
●適用事業報告
【労働基準監督署へ提出するもの】
●適用事業報告
従業員を雇用した場合、労働基準法の適用事業となってから速やかに提出します。
●労働保険関係成立届
従業員を雇用した場合、従業員を雇用した日から10日以内に提出します。
●労働保険概算保険料申告書
従業員を雇用した場合、従業員を雇用した日から50日以内に提出します。
●36協定書
従業員に時間外・休日労働をさせる場合、時間外・休日労働をさせる前に提出します。
【ハローワークへ提出するもの】
●雇用保険適用事業所設置届
雇用保険に加入する従業員を雇用した場合、従業員を雇用した日から10日以内に提出します。
●雇用保険被保険者資格取得届
雇用保険に加入する従業員を雇用した場合、従業員を雇用した月の翌月10日までに提出します。
会社設立後の納税
法人に関わる5つの税金
法人の税金には、「法人税」「住民税」「事業税」「消費税」「固定資産税」の5つがあります。これらは自分で税額を計算して申告する申告納税方式がとられています。基本的に黒字であれば課税されるのが、法人税と住民税、事業税です。住民税の一部である均等割という税金は、赤字であっても納税する義務があります。消費税、固定資産税は、資本金の額や前々事業年度の売上額、保有している資産などによって課税対象となるかどうか決まります。
個人事業と異なり、法人の税務申告は、できる限り税理士などの専門家に依頼することをお勧めします。
【法人税】
法人の所得に対して課せられる国税であり、事業年度に生じた所得に応じて税率が決まります。
【住民税】
自治体の運営管理のために徴収される地方税であり、納めるべき法人税額にい応じて課税される「法人税制」と資本金の額に応じて課税される「均等割」があります。
【事業税】
法人の所得に対して課せられる地方税であり、税率は都道府県ごとに定められています。
【消費税】
物品やサービスの売買に対して課せられる税金です。
【固定資産税】
法人が所有する土地や家屋又はそれ以外で事業に用いるもので、減価償却の対象となる資産に課される地方税であり、このうち償却資産に関する事項が申告の対象となります。
源泉所得税の納付
法人が、役員や従業員などに給与を支払う際、所得税を天引きし、代わりに税務署に納付する義務があります。これを「源泉徴収」といいます。原則として、給与などの支払いをした月の翌月10日までに納付する義務があります。ただし、一定の要件に当てはまる場合には、納期の特例の承認を受けて、半年に一度まとめて納付することもできます。源泉徴収した税金は、給与から納付のために預かったお金であり、会社が自由に使えるものではありません。必ず期限までに納付しましょう。
住民税の納付
法人が、役員や従業員などに給与を支払う際、所得税同様、住民税についても給与から天引きし、代わりに各市区町村の納付しなければなりません。この制度を「特別徴収」といいます。法人は、役員や従業員に給与を支払う際には所得税の源泉徴収義務と住民税の特別徴収義務があります。
特別徴収の納付については、1月31日までに、各従業員が居住する市区町村宛に前年の給与支払報告書を提出します。それに基づき、各市区町村は住民税を計算し、5月31日までに特別徴収税額を法人に通知します。その額を給与から天引きしていきます。
節税のポイント
青色申告の特例
節税のためのもっとも基本的な方法は、青色申告の承認を受けることです。青色申告の承認を受けることで、さまざまな特典を受けられます。
【欠損金の繰越控除】
事業年度の赤字を、その後9年にわたり繰り越して、黒字と相殺できる制度です。起業当初の赤字と軌道に乗ってからの黒字を相殺することができます。
【雇用促進税制】
一定人数の従業員を新たに雇用し、所定の手続を行った青色申告法人については、法人税の減額を受けることができます。この制度の適用を受けるには、あらかじめハローワークに「雇用促進計画」を提出する必要があります。計画した人数の雇用を達成した場合に、法人税の減額を受けることができます。
【減価償却の特例】
「中小企業等の少額減価償却資産の損金算入の特例」制度があり、30万円未満で取得した固定資産(中古も可)については、取得した事業年度で全額を償却し、現金に算入することができます。この制度の適用を受けられるのは、少額減価償却資産の取得価額の合計が300万円に達するまでとなっています。
所得税の節税方法
会社の役員は、会社から受け取る役員報酬について所得税を納めることになります。節税を考える際には、この役員個人の所得税についても検討し、効果的に現金を残すことを考えておく必要があります。もっとも広く利用されている制度が、小規模企業救済制度です。これを国が行う共通制度で、現役の間に毎月掛金を拠出し、役員を退任する際に拠出してきた掛金の額に応じて共済金を受取れるというものです。いわゆる経営者の退職金として広く利用されています。現役の間に支払う拠出金は、健康保険料や厚生年金保険料と同様に、全額所得金額から控除できるため、所得税の節税にもつながります。さらに、退任時に受け取る際の共済金も退職所得扱いできるため、大幅に節税できるものが特徴です。