⧉ 内容証明
内容証明とは
内容証明とは、郵便物の文書の内容ならびに差出人及び名宛人を証明する特殊取扱のことです。郵便物の差出日付・差出人・宛先・文書の内容を、日本郵便株式会社が謄本により証明する制度です。つまり、「この手紙をいつ、誰に、この内容であなたが出しました」ということを、総務省から業務を受託している日本郵便が証明するものでありますが、それ以上の法的効力はありません。
裁判所への提訴・調停や裁判外紛争解決手続の非訟手続、損害賠償請求、検察庁や労働基準監督署、警察などの公的機関への告訴・告発といった、俗に「訴え」と言われる法的措置の前段階として使われています。内容証明は必ず一般書留扱いとしなければなりません。
内容証明はあくまでも「日本郵便が第三者として、文書の存在とその内容を証明するもの」であり、日本郵便は記述内容の法的な正当性の有無、文書に関して生じた紛争には一切関与しません。内容証明は、出すこと自体が訴えの提起を予告するものですから、一種の相手に対する宣戦布告のようなものです。このため、悪徳商法業者や売掛金を言を左右にして払わない者に対して、「不法・不当なことには泣き寝入りしない」という強い意志を持っていることを相手方に伝えることで、相手方の出方を牽制できるという面も大きいといえます。訴えを起こすことを予告して相手を心理的に威迫しようとする時は、更に法律家や法的機関の関与を匂わせることもあります。
具体的には、
・文面で、「法的手段を取る」「提訴する」「法的機関へ告発する」ことを述べる
・法律の専門家による文書作成、代理人委任、職印の押捺
・裁判所内の郵便局からの発送
が行われています。
<内容証明郵便は、以下のような場合に使用します>
☑ 契約の解除をする場合
☑ 時効を中断させる場合
☑ 債権の消滅時効を主張する場合
☑ 売掛金等の金銭の請求をする場合
☑ 債権譲渡を債務者に通知する場合
☑ クーリングオフの通知
☑ 債権を放棄する場合
☑ 損害賠償請求、慰謝料請求
☑ 相続における遺留分減殺請求などなどの権利主張をする場合
内容証明郵便の書き方
内容証明郵便のルール
1.用紙について
内容証明郵便を出す際に、どのような用紙に書けばいいのか?実は、どんな用紙に記入しても構いません。内容証明郵便用の用紙として、市販されているものもありますが、実際には規定はなく、便箋でも、原稿用紙でも、メモ用紙でも、破いたノートでも、何でもよく、大きさも自由です。
2.同じものを3通用意する
内容証明郵便は、同じものを3通用意しなければなりません。3通とも同文でよいので、1通は手書き、残り2通はコピーでも構いません。パソコンで作成すれば、3通ともプリントアウトで出来上がりです。
3.文字数について
用紙についての制約はありませんが、文字数についてはルールがあります。1行20字以内、1枚に26行以内という制約があります。内容証明用に市販されている用紙は、このルールを間違えないように、マス目になっています。このマス目を超えなければ問題ないということで、わかりやすくなっています。また、マス目の制限ないであれば、1行で何文字でも、1枚で何行でも構いません。
4.使用できる文字
内容証明郵便に使用できる文字は決まっていいます。ひらがな・カタカナ・漢字・数字です。数字については、算用数字でも漢数字でも構いません。ただし、英字については、固有名詞のみ使用することができます。
字数の計算方法
固有名詞
(ハイフンも文字数にカウントします。)
メルセデスベンツC200・・12文字
記号
u、kg、ml・・各2文字
No.・・3文字
Tel.・・4文字
カッコ
文字や記号にカッコを付けたもの
※文中の序列を表す記号として認められるものに限り1文字として計算し、その他の場合は2文字になります。
<例文>
私は、貴殿に対し金500万円を・・15文字
(1)利息年1割5分・・8文字
(2)弁済期 令和3年1月1日・・12文字
の約束で貸し付けました。・・12文字
5.用紙が2枚以上になるときの注意点
内容証明郵便には、文字数や愛数の制限はありません。どれだけ長文になっても問題なく、用紙が10枚でもも20枚になっても構いません。ただし、2枚以上になったときは、ホッチキス等で綴じ、繋ぎ目に必ず差出人の印を押します。(契印、又は割印)
6.書き間違えたときの訂正方法
内容証明郵便の場合は、訂正の方法が内国郵便約款で決まっています。
文字を書き間違えた場合、
@ 間違えた個所を二重線で消します。
A 正しい文字を書きます。
B 欄外に「何字削除、何字加入」と記載します。
C 差出人のハンコ(認印可)を押します。※二重線で消した上に訂正印を押すのではありません。
7.差出人欄と受取人欄の書き方
内容証明郵便の場合、手紙の冒頭か最後に、差出人の住所氏名と受取人の住所氏名を書きます。名前だけでなく、住所の記載が義務付けられています。
押印ですが、内容証明郵便では法律上必要ありません。ただ、日本はハンコ社会なので、押印されている方が信用度合いが増します。
また、差出人や受取人の肩書(通知人○○や被通知人○○、催告者○○や被催告者○○といったもの)は必要ありません。書いても書かなくてもどちらでも構いません。
8.文書のタイトル
内容証明郵便には、「賃金請求書」「売掛金請求書」といったようなタイトルをつけているものがあります。これはつけてもつけなくてもどちらでも構いません。ただ、タイトルをつけたほうが、よりそれらしくなります。
9.封筒の書き方
封筒は、通常の手紙と同じです。内容証明専用の封筒があるわけではありません。封筒の表側に受取人の住所氏名、裏側に差出人の住所氏名を書きます。内容証明郵便に記載したものと同じ住所氏名でなければなりません。3人の連名で出す場合は、封筒の裏側には3人の住所氏名を書きます。
封筒は、封をせずに郵便局へ持っていきます。封をするのは、郵便局で名用証明郵便の手続をしてからとなります。
10.写真や資料は同封できない
内容証明郵便は、手紙以外の資料などを同封することはできません。
11.外国人が内容証明郵便を出すとき
内容証明郵便に使えるのは日本語だけで。アルファベットは、固有名詞の場合のみ使用できますが、それ以外では使えません。そのため、外国人のかたが内容証明郵便を出す場合であってもすべて日本語で記載しなければなりません。また、外国人はハンコを持っていないことのほうが一般できてあるため、押印することはできません。ただし、ハンコがなくてもサインで代用できることになっています。
12.差出人が2人以上の場合
差出人が複数の場合、用意する内容証明郵便や封筒は差出人が1人の場合と同じで何も変わりません。料金も同じです。封筒の裏側の差出人を全員分記載しなければならないのは前述の通りです。その他には、訂正する場合や契印を押す場合は、差出人全員の押印が必要です。
13.受取人が2人以上の場合
たとえば、ある人が土地を貸していたところ、借地人が死亡し、借地権を息子3人が相続しましたが、地代を支払わないので、地代の請求と借地契約の解除を内容証明郵便似て行うということがあります。
この場合、地主は3人の相続人に対し、同じ内容証明郵便を出すことができます。しかし、この方法では、3回も内容証明郵便を出すことになります。受取人が違うだけで、内容が同じものなら、1回の内容証明郵便で出すことができます。これを同文内容証明郵便といいます。これはさらに完全同文内容証明郵便と不完全同文内容証明郵便に分けることができます。
@ 完全同文内容証明郵便
2人以上の受取人にあてた内容証明郵便で、手紙の内容が全く同じであるだけでなく日付・差出人の記載、受取人の記載が全く同じものを完全同文内容証明郵便といいます。2人以上の受取人に出すものなので、受取人の記載が同じということは、受取人全員の住所氏名が連記してあることになります。どの受取人のところにも受取人全員の住所氏名が記載してある全く同じものが届くことになります。受取人1名の普通の内容証明郵便の場合には、、受取人用、差出人用、郵便局用の合計3通を作りますが、完全同文内容証明郵便の場合には、受取人が増えた分だけ増やします。受取人が3人なら、受取人用3通、差出人用1通、郵便局用1通の5通となります。封筒は受取人の数だけ用意します。しかし、封筒の受取人は全員の住所氏名を記載するのではなく、受取人1人ずつの住所氏名を記載して郵便局へ持っていきます。
A 不完全同文内容証明郵便
2人以上の受取人に同じ内容証明郵便を出す場合に、手紙の内容・日付・差出人の住所氏名は同じですが、完全同文内容証明郵便と違って、受取人全員を連記せず、受取人の記載は1人ずる別々に書いてだすこともできます。受取人の住所氏名だけが異なるので、不完全同文内容証明郵便といいます。
不完全同文内容証明郵便で出す場合にも、受取人の数プラス2通必要です。受取人が3人なら5通となります。手紙の内容、日付、差出人の住所氏名までは同じですから、そこまでは共通です。受取人の記載が完全同文型とは違います。郵便局と差出人が保管する手紙文、つまり2通は、受取人全員の住所氏名を連記します。受取人に送るものは、受取人1人ずつの住所氏名を書きます。Aに送るものにはAだけの住所氏名を書き、Bに送るものにはBだけの住所氏名を書きます。つまり受取人全員の住所氏名を連記した手紙文が2通、Aの住所氏名を書いた手紙文が1通、Bの住所氏名を書いた手紙文が1通です。
14.代理人によって出すときの注意
内容証明郵便は、必ず本人が出さなければならないわけではなく、代理人を立てて、その人に出してもらうこともできます。内容証明郵便は、裁判手続ではありませんので、誰が代理人になっても構いません。代理人によって出すときは、誰の代理人として、誰が出すのかを明確にいさせることが大事です。冒頭に代理文句を書いた場合には、差出人名を書くとき、「●●代理人」という肩書を省き、「住所●●」と書いても構いません。
内容証明郵便の出し方
1.郵便局へ持っていくもの
内容証明にする手紙文が書けたら、郵便局へ行き「これを内容証明郵便にしてください」と依頼します。
@ 内容証明にする手紙文(3通)
A 封筒1通
B 差出人のハンコ(訂正があった場合のために)
C 郵便料金
2.取扱いをする郵便局
内容証明郵便は、どこの郵便局からでも出せるわけではありません。内容証明を取り扱うのは、集配郵便局と日本郵便が指定する無配集郵便局(内容証明取扱店)に限られます。
3.内容証明郵便を出すときの手紙
同文の手紙3通と封筒1通を郵便局の窓口へ出すと、その文書がルールに従って記入されているかどうかを調べます。字数、行数、訂正等が間違いなくされているなどです。問題がなければ、手紙の末尾余白、「この郵便物は令和●年●月●日第●号書留内容証明郵便物として差し出すことを証明します 日本郵便株式会社」と記載し、その下に通信日付を押印します。3通分全部に行います。3通のうち1通を郵便局保管し、1通を差出人に戻します。残りの1通は、郵便局員立ち合いのもとに、差出人が封筒に入れて封をし、郵便局員に渡します。これを受取人に送ります。郵便局員から差出人に「書留・配達記録郵便物受領証」が渡され、内容証明郵便差出手続は完了です。この受領証は、大切に保管してください。
4.配達証明にすること
郵便局で内容証明郵便を出すときは、窓口で必ず「配達証明付き」にしてください。配達証明にしなければ、せっかくの内容証明郵便も受取人に配達されたかどうか、配達されたとしたら、いつ配達されたのかわかりません。配達証明付きにすると、1週間ほどで郵便局から差出人宛に、○月○日受取人に配達しましたことを証明しますという郵便配達記録証明書が送付されます。これが、内容証明郵便がいつ配達されたかを証明するものとなります。この配達証明書も大切に保管しておいてください。
配達証明を依頼する場合は、配達証明料(320円)が必要です。配達証明は、本来内容証明郵便を出すときに依頼しますが、出した後でも差し出してから1年以内なら配達証明をしてもらえます。その場合に必要な証明料は440円です。
5.受取人本人が直接受け取ってほしいとき
郵便物の郵送には、郵便物に記載された受取人ほんにに限って郵便物を渡すという本人限定受取という方法があります。内容証明郵便を配達証明付きで出した場合、受取人に配達されたことの証明はできますが、受取人本人が直接受け取ったかまではわかりません。そこで、受取人本人が直接受け取るようにするためには、内容証明郵便に本人限定受取を追加するとよいでしょう。本人限定受取の内容証明郵便が出されると、受取人へ到達通知書が送付されます。受取人は、郵便窓口で運転免許証等の本人確認書類を提示すると、その内容証明郵便を受取れます。
本人限定受取郵便を利用するには、利用料金は105円となります。
内容証明郵便にかかる費用
内容証明郵便を出す場合、次のような費用がかかります。
内容証明料金
受取人に出す手紙文が1枚のときには480円、1枚を超える場合には2枚目から1枚ごとに290円増しとなります。
書留料金
内容証明郵便は書留にする必要がありますので、書留料480円が必要です。
通常郵便料金
通常郵便物の料金が必要です。110円(定形50gまで)
配達証明料金
配達証明を、内容証明郵便差出の際に依頼すれば350円となります。
手紙文1枚で配達証明付きの場合、
内容証明料金480円+書留料金480円+通常郵便料金110円+配達証明料金350円の合計は1,420円となります。
手紙文2枚の場合、内容証明料金が基本の480円と1枚増加分290円と合わせて770円となり、合計2,190円です。
これらを速達にする場合は、速達料金300円が加算されます。これらの料金はすべて切手で納めます。内容証明料金分の切手は、郵便局に保存しておく内容証明郵便の最終頁の余白に貼り付けます。
2人以上の受取人に対し同文内容証明郵便を出す場合には、完全同文であれ、不完全同文であれ、2人目以降については、内容証明料金が半額になります。受取人2人で手紙文1枚の場合の内容証明料金は、480円プラス240円の720円です。手紙2枚なら、合計1,010円です。受取人3人で手紙1枚場合の内容証明料金は960円、手紙文が2枚ならば1,250円です。
クーリンングオフ
クーリングオフとは、”消費者が一定の期間内や一定の条件のもとで、一方的に契約の解除を相手方に認めさせる制度”です。
解除の理由は必要ありません。民法上はい一旦契約を締結したならば一方的に契約を取りやめたり、内容を変更できないのが原則です。しかし、事業者と一般の消費者とでは、情報量の格差などから対等な立場での契約とは言えません。そのため、消費者に対して一定期間冷静な判断をする期間を与え、民法の例外として契約の取消しができることとしました。これが「クーリングオフ」です。
クーリングオフは
対象となる取引契約が限定されており、期間も制限されています。また、クーリングオフは書面でしかできません。
クーリングオフは、法律で認められている場合(特定商取引法等)と業界自体の自主規制で認められている場合があります。個別の契約でも独自にクーリングオフの制度を認めている業者もあります。クーリングオフは期間の制限がありますので、スピーディーな対応が求められます。クーリングオフができる商品なのか、どういった通知を出せばいいのか、いろいろ考えているうちにクーリングオフの期間が過ぎていたというようなことも考えられます。また、クーリングオフの期間を過ぎてしまった場合でも、交付された契約書面や概要書面に法律で定められた記載がない場合は、書面不備で契約書は交付されたことにはならないのでクーリングオフをすることは可能です。まずは専門家へ相談してください。
クーリングオフができるとき
次の取引形態の場合、クーリングオフができます。クーリングオフ期間は、契約書面を受取った日を含めて起算します。消印がクーリングオフ期間内であれば、事業者へ届くのは期間以降でも有効です。
(クーリングオフ期間一覧)
@ 訪問販売(キャッチセールス、アポイントメントセールス、催眠商法)・・8日間
A 電話勧誘販売・・8日間
B 特定継続的役務提供(エステ、特定の美容医療サービス、語学教室、結婚相手紹介サービス等)・・8日間
C 連鎖販売取引(マルチ商法)・・20日間
D 業務提供誘因販売取引(内職商法、モニター商法)・・20日間
E 訪問販売(事業者が出向いて消費者から商品を買取るもの)・・8日間
クーリングオフができないとき
@ 自分で店舗に出向いて契約した場合(特定継続的役務提供に該当するものは除く)
A 通信販売で購入したもの
B 現金取引3,000円未満のもの
C 化粧品や健康食品などの消耗品を使用、消費した場合(未使用分は可能)※使った分はできない
D 路上勧誘をきっかけに行われる飲食店、マッサージ、カラオケボックス、海上タクシーに関するサービス
E 自動車リース
F その他適用除外にあたる商品やサービス