一般貨物自動車運送事業

Ⅰ.一般貨物自動車運送事業とは

他人の需要に応じ、有償で自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車を除く。)を使用して貨物を運送する事業を一般貨物自動車運送事業といいます。具体的には、会社や個人の方から貨物の運送の依頼を受け、自動車を使用して運送し、その対価として運賃や料金をを受け取る仕事がこの事業にあたります。

(ちなみに、軽自動車で行う運送事業は貨物軽自動車運送事業となり、届出が必要です。軽自動車以外で行う運送事業が一般貨物自動車運送事業となります。)
運送に使用するトラックは小型貨物車(4ナンバーのトラック)、普通貨物車(1ナンバーのトラック)、冷凍食品、石油類などの運送に使用する特種車(8ナンバーのトラック)、またいわゆる軽トラックと呼ばれている軽自動車(40ナンバーのトラック)などを使用して貨物を運送します。
貨物自動車運送事業に使用する車両のナンバープレート(自動車登録番号標)の色は、軽自動車であれば黒地に黄色の文字、これ以外は緑色地に白文字になっています。通常これらは総称して「営業ナンバー」または、「青ナンバー」と呼ばれ、自家用自動車と区別されています。

 

Ⅱ.許可の基準等

一般貨物自動車運送事業の許可を受けるためには 「貨物自動車運送事業法・同法施行規則・一般貨物自動車運送事業の許可申請の処理方針についての公示基準」等に規定する基準(許可基準)を満たす事業計画を作成しその事業計画が許可基準以上である必要があります。
基準は大きくわけて次の項目から構成され、項目毎に細かな基準が定めらています。

1.営業所
(1)使用権原を有することの裏付けがあること。

(2)農地法、都市計画法、建築基準法等関係法令に抵触しないものであること。
(3)規模が適切であること。
(4)必要な備品を備えているなど、事業遂行上適切なものであること。

 

2.車両数
(1)営業所毎に配置する事業用自動車の数は種別(貨物自動車運送事業法施行規則第2条で定める種別)ごとに5両以上とすること。

(2)計画する事業用自動車にけん引車、被けん引車を含む場合の最低車両台数の算定方法は、牽引車+被牽引車を1両と算定する。
(3)霊きゅう運送、一般廃棄物運送、一般的に需要の少ないと認められる島しょ(他の地域と橋梁による連絡が不可能なもの。)の地域における事業については、 (1)に拘束されないものであること。

 

3.事業自動車
(1)事業用自動車の大きさ、構造等が輸送する貨物に適切なものであること。

(2)使用権原を有することの裏付けがあること

 

4.車庫
(1)原則として営業所に併設するものであること。ただし、併設できない場合は平成3年6月25日運輸省告示第340号に適合するものであること。

(2)車両と車庫の境界及び車両相互間の間隔が50センチメートル以上確保され、かつ、計画する事業用自動車のすべてを収容できるものであること。
(3)他の用途に使用される部分と明確に区画されていること。
(4)使用権原を有することの裏付けがあること。
(5)農地法、都市計画法等関係法令に抵触しないものであること。
(6)事業用自動車が車庫への出入りに支障のないものであり、前面道路との関係において車両制限令に抵触しないものであること。なお、前面道路が私道の場合にあっては、当該私道の通行に係る使用権原を有する者の承認があり、かつ、事業用自動車が当該私道に接続する公道との関係において車両制限令に抵触しないものであること。

 

5.休憩・睡眠施設
(1)乗務員が有効に利用することができる適切な施設であること。

(2)睡眠を与える必要がある乗務員1人当たり2.5平方メートル以上の広さを有すること。
(3)原則として、営業所又は車庫に併設するものであること。ただし、営業所に併設されていない場合であって、車庫に休憩・睡眠施設を併設するときは、当該休憩・睡眠施設の所在地と休憩・睡眠施設を併設しない車庫の所在地との距離が10キロメートル(東京都特別区、神奈川県横浜市及び川崎市の地域に営業所を設置する場合にあっては、20キロメートル)を超えないものであるこ と。
(4)使用権原を有することの裏付けがあること。
(5)農地法、都市計画法、建築基準法等関係法令に抵触しないものであること。

 

6.運行管理体制
事業の適正な運営を確保するために、次の各号に掲げる管理体制を整えている こと。

(1)事業計画を適切に遂行するため必要とする員数の貨物自動車運送事業輸送安全規則第3条第2項に適合する事業用自動車の運転者を、常に確保できるものであること。
(2)選任を義務づけられる員数の常勤の運行管理者を確保する管理計画があること。
(3)勤務割及び乗務割が平成13年8月20日国土交通省告示第1365号に適合するものであること。
(4)運行管理の担当役員等運行管理に関する指揮命令系統が明確であること。
(5)車庫が営業所に併設できない場合には、車庫と営業所が常時密接な連絡をとれる体制を整備するとともに、点呼等が確実に実施される体制が確立している こと。
(6)事故防止ついての教育及び指導体制を整え、かつ、事故の処理及び自動車事故報告規則(昭和26年12月20日運輸省令第104号)に基づく報告の体制について整備されていること。
(7)危険品の運送を行う者にあっては、消防法等関係法令に定める取扱い資格者が確保されるものであること。

 

7.点検及び整備管理体制
(1)選任を義務づけられる員数の常勤の整備管理者を確保する管理計画があること。 ただし、一定の要件を満たすグループ企業(会社法第2条第3号及び第4号に定める子会社及び親会社の関係にある企業及び 同一の親会社を持つ子会社をいう。)に整備管理者を外部委託する場合には、事業用自動車の運行の可否の決定等点検及び整備管理に関する業務が確実に実施 される体制が確立されていること。

(2)点検及び整備管理の担当役員等点検及び整備管理に関する指揮命令系統が明確であること。

 

8.資金計画
(1)資金調達について十分な裏付けがあること。

(2)事業の開始に要する資金(以下、「所要資金」という。)の見積りが適切であり、かつ、資金計画が合理的かつ確実なものであること。なお、所要資金は次のア〜カの合計額とし、各費用ごとに以下に示すところにより計算されているものであること。
ア.車両費 取得価格(分割の場合は頭金及び1ヵ年分の割賦金。ただし、一括払いの場合は取得価格。)又は、リースの場合は1ヵ年分の賃借料等
イ.建物費 取得価格(分割の場合は頭金及び1ヵ年分の割賦金。ただし、一括払いの場合は取得価格。)又は、1ヵ年分の賃借料、敷金等
ウ.土地費 取得価格(分割の場合は頭金及び1ヵ年分の割賦金。ただし、一括払いの場合は取得価格。)又は、1ヵ年分の賃借料、敷金等
エ.保険料 @自動車損害賠償責任保険料又は自動車損害賠償責任共済掛金の1ヵ年分 A賠償できる対人賠償自動車保険(任意保険)料の1ヵ年分又は交通共済の加入に係る掛金の1ヵ年分 B危険物を取扱う運送の場合は、当該危険物に対応する賠償責任保険料の1ヵ年分
オ.各種税 租税公課の1ヵ年分
カ.運転資金 人件費、燃料油脂費、修繕費等の6ヶ月分
(3)所要資金の全額以上の自己資金が、申請日以降許可日までの間、常時確保さ れていること。

 

10.損害賠償能力
(1)自動車損害賠償責任保険又は自動車損害賠償責任共済に加入する計画のほ か、一般自動車損害保険(任意保険)の締結等十分な損害保障能力を有するものであること。

(2)石油類、化成品類または高圧ガス類等の危険物の輸送に使用する事業用自動車については、(1)号に適合するほか当該輸送に対応する適切な保険に加入する計画など十分な損害賠償能力を有するものであること。

 

11.許可に付す条件等
許可に際しては、次の各号に掲げる条件を付すものとする。

(1) 2.(3)に該当する事業については、当該事業に限定するなどし、車両数について特例を認めることとする。
(2)許可を受けた日から1年以内に運輸を開始すること。
(3)運行管理者及び整備管理者の選任届を運輸開始前に行うこと。
(4)運輸開始前に社会保険等加入義務者が社会保険等に加入すること。
(5)貨物自動車運送事業報告規則第3条の規定に基づき、運輸開始前に確認報告を行うこと。

 

12.欠格事由
施行規則第3条の2第1項第3号、第2項第3号及び第3項第3号に規定する者には、申請者の役員に占めるその役員の割合が2分の1を超える者や、申請者の株主と株主の構成が類似している者等が該当するものとする。

 

13.特別積合せ貨物運送をする場合
特別積合せ貨物運送をする一般貨物自動車運送事業の許可申請に対する審査は、上記の各項に加え、次の各号についても審査する。

(1)荷扱所
ア.使用権原を有することの裏付けがあること。
イ.農地法、都市計画法、建築基準法等関係法令に抵触しないものであること。
ウ.規模が適切であること。
(2)積卸施設
ア.営業所・荷扱所に併設するものであること。
イ.使用権原を有することの裏付けがあること。
ウ.農地法、都市計画法、建築基準法等関係法令に抵触しないものであること。
エ.施設は、貨物の積卸機能のみならず、荷捌き・仕分け機能、一時保管機能を有するものであること。
オ.施設の取扱能力は、当該施設に係る運行系統及び運行回数に見合うものであること。
(3)営業所及び荷扱所の自動車の出入口複数の事業用自動車を同時に停留させることのできる積卸施設を有する営業所及び荷扱所については、当該営業所及び荷扱所の自動車の出入口の設置が、 当該出入口の接する道路における道路交通の円滑と安全を阻害しないものであること。
(4)運行系統及び運行回数
ア.運行系統毎の運行回数は車両数、取扱い貨物の推定運輸数量、積卸施設の取扱能力等から適切なものであること。
イ.取扱い貨物の推定運輸数量は、算出基礎が的確であること。
ウ.運行車の運行は少なくとも1日1往復以上の頻度で行われるものであること。ただし、一般的に需要の少ないと認められる島しょ、山村等の地域においては、この限りでない。
(5)積合せ貨物管理体制
ア.貨物の紛失を防止するための適切な貨物追跡管理の手法又は設備を有するものであること。
イ.貨物の滅失・毀損を防止するために、営業所及び荷扱所において適切な作業管理体制を有するものであること。
ウ.貨物の紛失等の事故による苦情処理が的確かつ迅速に行いうる体制を有するものであること。
(6)運行管理体制運行系統別の乗務基準が平成13年8月20日国土交通省告示第1365号に適合するものであること。

 

14.貨物自動車利用運送をする場合
場合貨物自動車利用運送をする一般貨物自動車運送事業の許可申請に対する審査は、上記の1から10までの各項に加え、次の各号についても審査する。

(1)貨物自動車利用運送に係る営業所については、1.(1)〜(3)によること。
(2)業務の範囲については、「一般事業」又は「宅配便事業」の別とする。
(3)保管体制を必要とする場合は、保管施設を保有していること。

 

Ⅲ.一般貨物自動車運送事業の許可等の申請に係る法令試験の実施について

1.試験を実施する許可等申請事案
(1)一般貨物自動車運送事業(特別積合せ貨物運送をする場合を含む。)の経営許可申請(ただし、特定貨物自動車運送事業者が当該事業許可の廃止と同時に、新たに一般貨物自動車運送事業の許可を取得する場合については除く。)
(2)一般貨物自動車運送事業(特別積合せ貨物運送をする場合を含む。)の事業の譲渡 ・譲受、合併及び分割(一般貨物自動車運送事業の許可を取得している既存事業者が存続する場合は除く。)、相続認可申請
(3)特定貨物自動車運送事業の経営許可申請
2.受験者
受験者は、1申請に当たり1名のみとし、申請者が自然人である場合は申請者本人、申請者が法人である場合は、許可又は認可後、申請する事業に専従する役員とする。
3.法令試験の実施方法
(1)法令試験は、隔月(奇数月)で実施する。
(2)初回の法令試験は、原則として許可申請書等を受理した月の翌月以降に実施することとし、法令試験の実施予定日の前までに、別紙により申請者あて通知する。
(3)法令試験を実施した結果、合格基準に達しない場合は、翌々月に1回に限り再度の法令試験を受験できることとし、(2)に準じて再度通知する。
(4)再試験において合格点に達しない場合は、却下処分とする。ただし、当該申請についての取下の願い出があった場合は、この限りではない。
4.受験者の確認等
当該申請に係る受験者は、試験当日の開始前に申請人本人(申請者が法人である場合は、許可又は認可後申請する事業に専従する業務を執行する常勤役員)であること が確認できる運転免許証、パスポート等を提示すること。
5.出題範囲及び設問形式等
(1)出題の範囲(以下の法令等については、法令試験の実施日において施行されている内容から出題する。)
@貨物自動車運送事業法
A貨物自動車運送事業法施行規則
B貨物自動車運送事業輸送安全規則
C貨物自動車運送事業報告規則
D自動車事故報告規則
E道路運送法
F道路運送車両法
G道路交通法
H労働基準法
I自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(平成元年2月9日 労働省告示 第7号)
J労働安全衛生法
K私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
L下請代金支払遅延等防止法
(2)設問方式
○×方式及び語群選択方式とする。
(3)出題数
30問
(4)合格基準
出題数の8割以上とする。
(5)試験時間
50分とする。
<法令試験の結果、合格基準に達しない場合>
※初回の法令試験において合格基準に達しなかった場合は、翌々月に1回限り再試験を受験できます。
※再試験においても合格点に達しない場合は、許可申請が却下処分となりますので、申請を取り下げることになります。ただし、再度の申請は可能です。

 

Ⅳ.許可から事業開始までの流れ

<事前相談、車両・営業用施設等の準備>
一般貨物自動車運送事業の許可を受けるための要件確認。車両選びや車庫の確保等、特に営業所や車庫に関しては、都市計画法、建築基準法、農地法等の関係法令に違反する物件は使用できませんので慎重に選ばなければなりません。
<申請書類作成>
一般貨物自動車運送事業の許可を受けるための要件の確認をして申請書類を作成します。申請段階では車両の購入までは必要なく、見積書等でも可能です。
@一般貨物自動車許可申請様式
A許可申請書作成の手引き
B運輸開始前報告
C運輸開始届出様式
D一般貨物自動車運送事業の事業計画変更申請様式
E一般貨物変更届出様式
<許可申請>
管轄の運輸局(支局長)に許可申請書を提出します。
標準処理期間: 一般貨物自動車運送事業の許可の場合、3〜5ヶ月
<法令試験>
法人の役員のうち1名、又は、個人事業の場合は事業主が、一般貨物自動車運送事業を遂行するに足りる法令知識を有しているかを確認するための各地方運輸局で実施される法令試験に合格する必要があります。(受験回数は2回)法令試験が実施される月は、許可申請した翌月以降の奇数月となります。法令試験に2回不合格になると申請は却下(取下げ)となります。
<許可処分>
問題がなければ、標準処理期間後に許可証が交付されます。管轄の運輸支局にて許可証の交付式が行われ許可証を受領します。許可後、登録免許税12万円を払い込みます。
<運行管理者及び整備管理者の選任届出>
運行管理者と整備管理者の選任届出書を管轄運輸支局の整備課に提出します。
<運輸開始前の確認書類の提出>
事業計画の運転者の雇用、社会保険、労働保険等の加入を行い運輸開始前の確認書を提出します。運輸開始前の確認書類を提出しなければ事業用自動車の登録ができません。
<運輸開始の準備>
車両の登録、各種保険の手続、事業用施設の整備、備え付け書類(帳簿・帳票類)の準備入、運賃料金設定届出の提出など。
<運輸開始届出>
事業開始の準備ができ次第運輸開始が可能です。運輸開始後遅滞なく運輸開始届出を管轄運輸支局に提出します。なお、許可後1年以内に運輸を開始しない場合は許可が失効します。
<トラック協会による巡回指導の実施>
運輸開始届出を提出した数カ月後にトラック協会による巡回指導が実施されます。主に帳簿類のチェックが行われます。

 

Ⅴ.事業開始後に必要となる手続・報告等

○事業計画の変更等
事業開始後(運輸開始後)に車庫の新設・移転・収容能力の変更や営業所の変更、営業所ごとの事業用自動車の数の変更(増車・減車)、運行管理者・整備管理者の変更などがあった場合は、事案に応じて運輸支局において認可申請や変更届出が必要です。運賃及び料金を変更する場合にも届出が必要となります。
○事業計画の変更認可申請と変更届出
営業所の新設や移転、車庫の増設や移転、休憩・睡眠施設の移転等、当初の事業計画に変更が生じる場合は、事業計画変更の認可申請が必要となり、事前に認可を得てから変更を行うことになります。認可申請の対象ではない、法人代表者の変更(代表者以外の役員に関しては前年7月1日から翌6月30日までの変更に関して毎年7月31日までに一括での届出)、主たる事務所(本店)の移転、車庫の減少、車庫の増設を伴わない増車や減車などは届出の対象となっており、変更事由発生から一定の期間内に届出が必要となります。法人代表者の変更や主たる事務所(本店)の移転、営業所の新設や移転等の場合は運輸支局への認可申請・届出と併せて(認可申請の場合は認可後に)整備課への運行・整備管理者選任等届出も必要となります。
○毎年の報告義務等
一般貨物自動車運送事業者は、毎事業年度経過後100日以内に営業活動状況を報告する事業報告書の提出と、前年4月1日から3月31日までの1年間の輸送実績を報告する「事業実績報告書」の提出が義務付けられています。