風俗営業許可申請

Ⅰ.風俗店営業とは
風俗営業に該当するお店を営もうとする場合は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)により営業を開始する前にお店(営業所)の所在地を管轄する公安委員会の許可を受けなければなりません。
具体的には接待等をするスナック、キャバクラ、バー、クラブ等の社交飲食店やパチンコ店、麻雀店、ゲームセンターなどが該当します。
無許可営業に関しては重い罰則(2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金、または懲役と罰金の併科)が課せられますので、適正に営業を営むために、風俗営業に該当するお店を営む場合は必ず許可を得て行う必要があります。
特に居抜きで入る場合、「以前のお店は問題なく大丈夫だったから今回も大丈夫」という保証はどこにもありません。
適正に許可を取って営業をすることが、お店の安定とお得意さまの信頼に繋がります。
風営適正化法による許可・届出の対象となる営業
風俗営業許可取得までの流れ
@事前のご相談

まずはお電話又はメールにてご相談ください。
その際に許可要件を満たしているか簡単なチェックを行います。
A面談による打ち合わせ

お客さまのご都合に合わせて面会して、その他の詳細をご説明いたします。

B書類・図面作成

測量後、図面作成・必要書類の収集及び作成を行います。
C警察署への申請

必要書類が揃いましたら、押印後に所轄警察署へ申請します。審査期間は書類受理後、概ね55日程度です。

D実地調査

申請後、3週間程度で店舗の実地調査が行われます。警察と浄化委員会により構造要件の確認及び図面と一致しているかの確認を行います。
E許可証交付

実地調査で問題がなければ、申請から55日程度で許可証が交付され営業開始となります。

Ⅱ.風俗店営業の種類(許可を得る必要がある営業)
第1号営業(社交飲食店、料理店)
キャバレー、待合、料理店、カフェその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業(接待行為があり、飲食もできるお店)
第2号営業(低照度飲食店)
喫茶店やバーで明かりが10ルクス以下で営業する接待行為なしの飲食店
第3号営業(区画飲食店)
喫茶店やバーで見通しの困難な壁などで区画した5u以下の客室を複数設けて営業する接待行為のない飲食店(ネットカフェ等)
第4号営業(パチンコ店、麻雀店)
パチンコ、麻雀その他設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊戯をさせる営業
第5号営業(ゲームセンター)
スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊戯設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊戯に用いることができるものを備える
店舗その他これに類する区画された施設において当該遊戯設備により客に遊戯をさせる営業 
<接待行為とは>
第1号営業を除き、接待行為を行うことはできません。接待行為とはどのような行為をいうのでしょうか。
店側が接待の主体となって、「積極的に」「特定少数の客」「特定の客」に働きかけるというのが接待のポイントです。
風俗営業法の定義では「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすことをいう」とされています。
具体的には、以下のような行為が接待にあたります。
談笑・お酌等
特定少数の客の近くにはべり、継続して、談笑の相手となったり、酒等の飲食物を提供したりする行為。
例外として「お酌をしたり水割りを作るが速やかにその場を立ち去る行為」「客の後方で待機し、又はカウンター内で単に客の注文に応じて酒類等を提供するだけの行為及びこれらに付随して社交儀礼上の挨拶を交わしたり、若干の世間話をしたりする程度の行為」は接待にあたらない。
踊り等
特定少数の客に対して、専らその客の用に供している客室又は客室内の区画された場所において、歌舞音曲、ダンス、ショウ等を見せ、又は聞かせる行為。例外として「ホテルのディナーショウのように不特定多数の客に対し、同時に、踊り、ダンス、ショウ等を見せ、又は歌若しくは楽器の演奏を聞かせる行為」は、接待には当たらない。
歌唱等
特定少数の客の近くにはべり、その客に対し歌うことを勧奨し、若しくはその客の歌に手拍子をとり、拍手をし、若しくはほめはやす行為又は客と一緒に歌う行為。例外として「客の近くに位置せず、不特定の客に対し歌うことを勧奨し、又は不特定の客の歌に対し拍手をし、若しくはほめはやす行為」「不特定の客からカラオケの準備の依頼を受ける行為又は歌の伴奏のため楽器を演奏する行為」等は、接待には当たらない。
遊戯等
客とともに、遊戯、ゲーム、競技等を行う行為。
例外として「客一人で又は客同士で、遊戯、ゲーム、競技等を行わせる行為」は、直ちに接待に当たるとはいえない。
その他
客と身体を密着させたり、手を握る等客の身体に接触する行為。
例外として「社交儀礼上の握手、酔客の介抱のため必要な限度で接触する等の行為」は、接待に当たらない。
客の口許まで飲食物を差出し、客に飲食させる行為。
例外として「単に飲食物を運搬し、又は食器を片付ける行為、客の荷物、コート等を預かる行為」等は、接待に当たらない。

Ⅲ.風俗店営業の許可要件
風俗営業を営むためには営業の種別に応じてお店(営業所)ごとに、そのお店の所在地を管轄する都道府県公安委員会の許可を受けなければなりません。
風俗営業の許可を受けるためには 「経営者等に関する要件」「お店の場所に関する要件」「お店の構造及び設備に関する基準」の3つの大きな要件があります。
【人的要件】
1.破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
2.1年以上の懲役若しくは禁錮の刑に処せられ、又は一定の罪を犯して1年未満の懲役若しくは罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者
3.集団的に、又は常習的に暴力的不法行為等を行うおそれのある者
4.アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者
5.心身の故障により風俗営業の業務を適正に実施することができない者
6.風俗営業の許可を取り消されて5年を経過しない者
7.営業に関して成年者と同一の能力を有しない未成年者
8.法人の役員、法定代理人が上記1から6までのいずれかに該当する者があるとき
外国人の場合は、申請できる在留資格が限られます。
・日本人の配偶者等
・永住者、特別永住者
・永住者の配偶者等
・定住者
・経営・管理
※上記以外の在留資格を持つ
外国人は、申請者、管理者共になることはできません。また、従業員として雇い入れることもできません。
【場所的要件】
第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、田園住居地域、準住居地域では営業できません。
【風俗営業が制限される地域】
住居集合地域
条例で定める学校、病院等の保全対象施設の敷地から100m以内の地域。※用途地域が商業地域であれば、距離制限が緩和されます。
【保全対象施設】※東京都の場合
学校、病院、診療所(入院設備のあるもの)、児童福祉施設、図書館が保全対象施設になります。(各都道府県条例に定められています)
学校(学校教育法1条)
幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学、高等専門学校 ※対象となる学校は学校教育法1条に定められたもののみ、専門学校は対象外。
児童福祉施設(児童福祉法7条)
助産施設(1種は病院に含まれる)、乳児院、母子生活支援施設、保育所(認可保育所のみ)、幼保連携型認定こども園、児童厚生施設、児童養護施設、障害児入所施設、児童発達支援センター、児童心理治療施設、児童自立支援施設、児童家庭支援センター
«保全対象施設と距離»
用途地域 
近隣商業施設           
保全対象施設
・〖学校(大学を除く)、図書館、児童福祉施設〗については、距離制限は100m
・〖大学、病院、診療所(8床以上)〗については、距離制限は50m
・〖第二種助産施設、診療所(7床以下)〗については、距離制限は20m
用途地域 
商業施設           
保全対象施設
・〖学校(大学を除く)、図書館、児童福祉施設〗については、距離制限は50m
・〖大学、病院、診療所(8床以上)〗については、距離制限は20m
・〖第二種助産施設、診療所(7床以下)〗については、距離制限は10m
用途地域 
工業地域、その他地域           
保全対象施設
・〖学校、図書館、児童福祉施設、病院、診療所(入院設備あり)〗については、距離制限は100m
【保全対象設備の有無にかかわらず許可される地域】
近隣商業地域及び商業地域のうち、空賊営業に係る営業所が密集した地域で、特に風俗営業の規制にあたり支障がないと公安委員会が認めて告示する区域では、保護対象施設が規定の距離の中にあっても営業が特別に許可されます。
中央区:銀座四丁目から銀座八丁目
港区:新橋二丁目から新橋四丁目
新宿区:歌舞伎町一丁目、歌舞伎町二丁目(9番、10番及び19番から46番)、新宿三丁目
渋谷区:道玄坂一丁目(1番から18番)、道玄坂二丁目(1番から10番)、桜丘町(15番、16番)
【構造的要件】
<風俗営業の種別>
法第2条第1項第1号
<構造及び設備の技術上の基準>
1.客室の床面積は、和風の客室に係るものにあっては一室の床面積を9.5平方メートル以上とし、その他のものにあっては一室の床面積を16.5平方メートルとすること。ただし、客室の数が一室のみである場合は、この限りではない。
2.客室の内部が当該営業所の外部から容易に見通すことができないものであること。
3.客室の内部に見通しを妨げる設備を設けないこと。
4.善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと。
5.客室の出入口に施錠の設備を設けないこと。ただし、営業所外に直接通ずる客室の出入口については、この限りではない。
6.(規則)第30条に定めるところにより計った営業所内の照度が5ルクス以下とならないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること。
7.(規則)第32条に定めるところにより計った騒音又は振動の数値が法第15条の規定に基づく条例で定める数値に満たないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること。
<風俗営業の種別>
法第2条第1項第2号に掲げる営業
<構造及び設備の技術上の基準>
1.客室の床面積は、一室の床面積を5平方メートル以上(客に遊興させる態様の営業にあっては33平方メートル以上)とすること。
2.客室の内部が当該営業所の外部から容易に見通すことができないものであること。
3.客室の内部に見通しを妨げる設備を設けないこと。
4.善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと。
5.客室の出入口に施錠の設備を設けないこと。ただし、営業所外に直接通ずる客室の出入口については、この限りではない。
6.(規則)第30条に定めるところにより計った営業所内の照度が5ルクス以下とならないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること。
7.(規則)第32条に定めるところにより計った騒音又は振動の数値が法第15条の規定に基づく条例で定める数値に満たないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること。
<風俗営業の種別>
法第2条第1項第3号に掲げる営業
<構造及び設備の技術上の基準>
1.客室の内部が当該営業所の外部から容易に見通すことができないものであること。
2.善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと。
3.客室の出入口に施錠の設備を設けないこと。ただし、営業所外に直接通ずる客室の出入口については、この限りではない。
4.(規則)第30条に定めるところにより計った営業所内の照度が5ルクス以下とならないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること。
5.(規則)第32条に定めるところにより計った騒音又は振動の数値が法第15条の規定に基づく条例で定める数値に満たないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること。
6.(政)令第3条第3項第1号ハに掲げる設備を設けないこと。
上記のような構造・設備の基準については専門的な図面を添付して要件を満たしていることを証明する必要があります。
この図面には、営業所の平面図、求積図、照明器具配置図等があります。図面に関しては慣れていないと大変骨の折れる作業になります。
上記のような様々な営業の種別に応じた要件が全て満たされることにより(この他にも細かい要件はたくさんあります)、はじめて風俗営業の許可が取得できます。
さらに、申請後に公安委員会の審査が55日ほどかかります。(地域や申請の時期などによって審査の期間は変わってきます) 
また、審査期間の間に、実査といって営業所の内部を実際に立会い調査・確認する手続もあります。
実査とは営業所が実際に申請通りになっているかを公安委員会が調査・確認する手続です。
(実際に調査に来るのは所轄の警察署担当者や環境浄化協会という機関の担当者です)

Ⅳ.提出書類
1.風俗営業許可申請書
2.営業方法を記載した書類
3.営業所の使用権原を疎明する書類
  (賃貸の場合)  → 使用承諾書又は賃貸借契約書及び建物登記事項証明書(登記簿謄本)
  (自己所有の場合)→ 建物登記事項証明書(登記簿謄本)
4.入居概況説明図
5.1階概略図
6.入居階概況略図
7.住民票(本籍地入りのもの)申請者(法人の場合は監査役を含む役員全員)および管理者
8.身分証明書 申請者(法人の場合は監査役を含む役員全員)および管理者
9.誓約書(法人の場合は全役員の誓約書が必要です)
10.営業所平面図
11.求積図(営業所および客室)
12.求積表(営業所および客室)
13.照明・音響配置図
14.営業所周辺100m 以内の地域の見取り図
15.営業所所在場所の用途地域証明または都市計画図
16.保健所許可証写または収受印のある保健所申請書控(飲食関係営業のみ)
17.メニュー及び料金システム表(飲食関係営業のみ)
18.管理者の写真2枚(3 p x2.4 p、無帽・正面・上三分身、申請前6か月以内に撮影したもの、裏面に氏名及び撮影日記入)
19.管理者が法第24条第2項に掲げる者に該当しないことを誓約する書面
20.定款及び履歴事項証明書(申請が法人の場合のみ)
21.在留カードのコピー(表・裏、外国人の場合のみ)
22.その他、麻雀店の申請に関しては麻雀台全台につき、「レート表示が出来ない麻雀台であること」又は「精算機能の付いていない麻雀台であること」が分かる写真を添付する必要があります。ぱちんこ屋の場合は、遊技機に係る検定通知書の写し及び保証書等
※成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律が令和元年12月14日に施行されたことに伴い、「登記されていないことの証明書」の添付が不要となりました。

Ⅴ.風俗営業許可申請の注意点
風俗営業は深夜0時以降(場所又は期間によっては深夜1時以降)から午前6時前までは営業ができません。  
深夜にも営業を続けたい場合は深夜酒類提供飲食店営業開始届を提出する必要があります。
ただし、この場合は接待行為は出来ませんので注意が必要です。                     
「風俗営業の許可」と「深夜酒類提供飲食店の届け」は同一のお店(営業所)では両方持つことはできません。
したがって、お店を始める前に、接待飲食営業か接待行為のない深夜営業形態かどちらかを選ぶ必要があります。

Ⅵ.風俗営業許可を受けた後の注意点
風俗営業の許可を受けているお店であっても、許可後にお店の大規模な修繕・模様替え、客室の位置・数、床面積の変更などがある場合は変更前にあらかじめ変更承認申請を提出して公安委員会の承認を受けなければなりません。 
さらに、営業者の氏名(法人の場合は会社名)及び住所の変更があった場合や、法人の代表者の氏名の変更、お店の名称の変更、監査役を含む法人役員の氏名及び住所の変更などがあった場合も、変更があった日から一定の期日までに変更届出を公安委員会に提出しなければなりません。
このように、風俗営業は煩雑な手続きがとても多い営業です。
申請手続きは専門家に任せて、ご自身は本業に集中してください。多少の費用負担はあっても経営者の方にはメリットの方が大きいはずです。


 特定遊興飲食店営業許可申請

Ⅰ.特定遊興飲食店とは
特定遊興飲食店営業とは、ナイトクラブその他設備を設けて客に遊興をさせ、かつ、深夜の時間帯に客に対して飲食(酒類を提供して営むものに限る)させる営業で、午前6時から翌日の午前0時前の時間においてのみ営むもの以外の営業で、風俗営業に該当する営業ではない営業をいいます。
特定遊興飲食店の要件
1.午前0時以降午前6時まで客に酒類を提供する
2.客に遊興させる
3.客室の照度が10ルクスを超える
※東京都の条例では午前5時から午前6時までの間、特定遊興飲食店は営業できません。
この許可を受けて営業を行うためには営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会の許可を受けなければなりません。
もちろん前提として飲食を提供するお店ですので保健所の食品衛生(飲食店営業)の許可も得る必要があります。
<遊興とは>
特定遊興飲食店営業として規制対象となる遊興に関しては 「遊興」 の定義と 「させる」 の定義を理解する必要があります。
@「遊興」の定義
言葉自体は「遊ぶこと。特に,料理屋などで酒を飲んだりして遊び興じることをいいます」
お酒を介した遊びというような意味合いとなりますので基本的に酒席での次のような行為が「遊興」と考えられます。
ショーやダンス、演芸その他の興行等を見せる行為、歌手がその場で歌う歌、バンドの生演奏等を聴かせる行為、客にダンスをさせる場所を設けるとともに、音楽や照明の演出等を行い、不特定の客にダンスをさせる行為、のど自慢大会、カラオケ等の遊戯、ゲーム、競技等、スポーツ等の映像を客に見せる行為など。
したがって、同じ遊びでも「遊技」にあたるような、麻雀、パチンコ、スロットマシン、テレビゲーム機等は「遊興」には該当しません。
A「させる」の定義
お客に遊び興じさせることで、具体的な態様としては「営業者側の積極的な行為によって」「客に遊び興じさせる」状態をいいます。
客にダンスをさせる場所を設けるとともに、音楽や照明の演出等を行い、不特定の客にダンスをさせる行為、営業者側の積極的な行為によってショー等を鑑賞するよう不特定の客に勧める行為や実演者が不特定の客の反応に対応し得る状態で演奏・演技を行う行為、遊戯等を行うよう(営業者が)不特定の客に勧める行為、遊戯等を盛り上げるための言動や演出を(営業者が)不特定の客に行う行為等は、営業者側の積極的な行為に当たります。

これに対して、営業者側の積極的な行為がない場合は「客に遊興をさせる」ことには当たりません。
例えば、いわゆるカラオケボックスで不特定の客にカラオケ装置を事由に使用させる行為やカラオケ装置を設け、不特定の客が自分から歌うことを要望した場合に、マイクや歌詞カードを手渡し、又はカラオケ装置を作動させる行為、バー等でスポーツ等の映像を単に不特定の客に見せる行為(客自身が応援等を勝手に行う場合)、単にテレビの映像や録音された音楽を流すような行為、ボーリングやビリヤードの設備を設けてこれを不特定の客に自由に使用させる行為等は「客に遊興をさせる」ことには当たりません。
要するに、不特定の客が自ら遊戯を希望した場合に限ってこれを行わせ、不特定の客の遊戯に対して営業者側が何らの反応も行わないような場合は、営業者側の積極的な行為には当たらず、「客に遊興をさせる」ことには当たりません。飲食店での映像によるスポーツ観戦も営業者側の積極的な行為(応援の音頭を積極的にとったり)の態様があればその店舗が、深夜にお酒を提供して反復継続して、営業としてそのようなコンセプトの飲食店営業を行う場合は、この特定遊興飲食店営業の許可が必要となってきます。
また、この営業者側の積極的な行為は全て不特定多数の客に対するものですので、特定の客に対する積極的な行為がある場合は「接待行為」にあたりますので風俗営業の接待飲食(2号営業)の許可の対象となります。

Ⅱ.特定遊興飲食店営業の許可要件
特定遊興飲食店営業を営むためには、そのお店の所在地を管轄する都道府県の公安委員会の許可を受けなければなりません。
特定遊興飲食店営業の許可を受けるためには 「経営者等に関する欠格要件」 と 「店舗の場所に関する要件」 さらに 「店舗の構造及び設備に関する基準」の3つの大きな要件があります。
これは風俗営業の許可と同様なものとなります。
【人的要件】
1.破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
2.1年以上の懲役若しくは禁錮の刑に処せられ、又は一定の罪を犯して1年未満の懲役若しくは罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者
3.集団的に、又は常習的に暴力的不法行為等を行うおそれのある者
4.アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者
5.心身の故障により風俗営業の業務を適正に実施することができない者
6.風俗営業の許可を取り消されて5年を経過しない者
7.営業に関して成年者と同一の能力を有しない未成年者
8.法人の役員、法定代理人が上記1から6までのいずれかに該当する者があるとき
【場所的要件】
☐営業可能地域
東京都内の営業可能地域は、以下のいずれかです。条例で定められているので都道府県ごとで該当条例を確認する必要があります。
・東京都公安委員会規則第4条により東京都公安委員会が公示する地域(風俗営業の営業時間許容地域と同一)
・近隣商業地域のうち、港区六本木4丁目から7丁目までの地域
・東京湾の一部

上記以外の地域では営業することはできません。
さらに、上記の地域内であっても、住居集合地域又は住居集合地域からの距離が20m以下の区域(当該区域が風俗営業等密集地域であれば、幹線道路の各側端から50m以下の区域を除く)は、営業が許可されません。
☐ホテル内の営業
上記以外の地域外であっても、ホテル・旅館が以下の要件を満たしている場合は、当該ホテル等の中で特定遊興飲食店営業をすることができます。
・同一階のほかの区域、直上・直下の部分をホテル等営業者又は風俗営業者、特定遊興飲食店営業者もしくは深夜における酒類提供飲食店営業者
 もしくは興業営業者が管理していること。
・バルコニーを設置する場合はバルコニーに通じる出入口に二重扉を設けること。
・非常の場合を除き、ホテル等営業者が管理する部分を通じてのみ客が営業所に出入りできる構造であること。
・ホテル等営業者が営業所への客の出入りを適切に管理できること。
・営業所が設けられるホテル等の施設が店舗型性風俗特殊営業(ラブホテル・モーテル等)の用に供されないこと。

☐保全対象地域
特定遊興飲食店営業に関する保全対象施設は以下の通りです。保全対象施設から規定距離の範囲内では、営業は許可されません。
社交飲食店と比較すると、学校・図書館が保全対象施設に入っていません。
また近隣商業地域にあるときは、全ての保全対象施設から100m以上離れなければなりません。
用途地域 
近隣商業施設           
保全対象施設
・〖児童福祉施設、病院、診療所(8床以上)、第二種助産施設、診療所(7床以下)〗については、距離制限は100m
用途地域 
商業施設           
保全対象施設
・〖児童福祉施設〗については、距離制限は50m
・〖病院、診療所(8床以上)〗については、距離制限は20m
・〖第二種助産施設、診療所(7床以下)〗については、距離制限は10m
【構造的要件】
☐客室の広さ
すべての客室の床面積が33平方メートル以上なければなりません。客室が1室しかなくても、この要件を満たさなければなりません。営業所ではなく、客室の床面積であることに注意が必要です。
☐その他
以下の要件を全て満たさなければなりません。
・客室の床面積が33平方メートル以上であること。
・客室に見通しを妨げる設備を設けないこと。
・善良の風俗もしくは清浄な風俗環境を害し、又は少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと。
・客室の出入口に施錠の設備を設けないこと。ただし、営業所外に直接通ずる客室の出入口については、この限りではない。
・第95条(風俗営業等の規則及び業務の適正化等に関する法律施行規則、以下「規則」という)に定めるところにより測った営業所内の照度が10ルクス以下とならないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること。
・第32条(同)に定めるところにより測った騒音又は振動の数値が法第31条の23において準用する法第15条の規定に基づく条例で定める数値に満たないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること。

Ⅲ.提出書類
1.特定遊興飲食店営業許可申請書
2.営業方法を記載した書類
3.営業所の使用権原を疎明する書類
  (賃貸の場合)   → 使用承諾書又は賃貸借契約書及び建物登記事項証明書(登記簿謄本)
  (自己所有の場合)→ 建物登記事項証明書(登記簿謄本)
4.入居概況説明図
5.1階概略図
6.入居階概況略図
7.住民票(本籍地入りのもの)申請者(法人の場合は監査役を含む役員全員)および管理者
8.身分証明書 申請者(法人の場合は監査役を含む役員全員)および管理者
9.誓約書(法人の場合は全役員の誓約書が必要です)
10.営業所平面図
11.求積図(営業所および客室)
12.求積表(営業所および客室)
13.照明・音響配置図
14.営業所周辺地域の略図
15.保健所許可証写または収受印のある保健所申請書控(飲食関係営業のみ)
16.メニュー及び料金システム表
17.管理者の写真2枚(3 p x2.4 p、無帽・正面・上三分身、申請前6か月以内に撮影したもの、裏面に氏名及び撮影日記入)
18.管理者が法第24条第2項に掲げる者に該当しないことを誓約する書面
19.定款及び履歴事項証明書(法人申請の場合のみ)
20.在留カードのコピー(表・裏、外国人の場合のみ)
※成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律が令和元年12月14日に施行されたことに伴い、「登記されていないことの証明書」の添付が不要となりました。

Ⅳ.特定遊興飲食店営業の許可を受けた後の注意点
営業者の義務(責務)として、良好な風俗環境の保全を図るための規定が設けられ営業者には次のような義務が課されます。
1.風俗営業者及び特定遊興飲食店営業者は、深夜において、客が営業所の周辺において他人に迷惑を及ぼすことがないようにするための義務。
・ 営業所周辺においての他人に迷惑を及ぼしてはならない旨の表示の掲示又は客への交付
・ 営業所周辺においての他人に迷惑を及ぼしてはならない旨の、客に対する口頭説明及び音声による周知
・ 泥酔した客への酒類提供禁止
・ 営業所内及び営業所周辺の巡視
・ 営業所周辺の迷惑行為を行う客に対しての「とりやめ、またはこれをおこなわないよう」に求めること
2.従業員に対する教育
3.苦情処理に関する帳簿の備え付け義務(3年間の保存)と苦情の処理

また、許可後にお店の大規模な修繕・模様替え、客室の位置・数、床面積の変更などがある場合は、変更前にあらかじめ変更承認申請を提出して公安委員会の承認を受けなければなりません。
さらに、営業者の氏名(法人の場合は会社名)及び住所の変更があった場合や、法人の代表者の氏名の変更、お店の名称の変更、監査役を含む法人役員の氏名及び住所の変更などがあった場合も、変更があった日から一定の期日までに変更届出を公安委員会に提出しなければなりません。
このように、特定遊興飲食店営業許可は煩雑な手続きがとても多い営業です。
申請手続きは専門家に任せて、ご自身は本業に集中してください。多少の費用負担はあっても経営者の方にはメリットの方が大きいはずです。


 深夜における酒類提供飲食店営業開始届

Ⅰ.深夜酒類提供飲食店とは
スナック、居酒屋、バー、パブなど客に主として酒類を提供して営む飲食店営業を深夜0時以降(地域によっては午前1時以降)から日の出時までにおいて営む場合はこの「深夜酒類提供飲食店営業開始届」というものを管轄の警察署に届け出る必要があります。
主として酒類を提供するということなので、例えばファミリーレストランや牛丼屋さんがビールなどを深夜に提供する場合はこの届出は必要ありません。飲食店の営業許可で営業できます。
お酒メインの営業を深夜にわたって行う場合が届出の対象になります。 
また、ホステスやホストが接待行為を行う場合は深夜酒類提供飲食店営業開始届ではなく風俗営業に当たりますので、風俗営業の許可を取得しなければなりません。 
風俗営業の場合は深夜営業は出来ません。 
行おうとしている営業が、深夜酒類提供飲食店営業なのか風俗営業に当たるのか、ご不明な場合はお気軽にご連絡ください。
なお、深夜酒類提供飲食店営業と風俗営業を同じ店で両方取得することは原則的には認められない運用となっております。

Ⅱ.深夜における酒類提供飲食店営業開始の届出要件
【人的要件】
深夜における酒類提供飲食店営業開始届には、人的欠格事由はありません。この点、風俗営業の人的欠格事由と同じと勘違いされている人も多いようなので注意が必要です。
【場所的要件】
深夜営業を行うことができない用途地域内に営業所がある場合、届出することはできません。誤って届出すれば取下げになります。大抵は所轄警察所の担当者が受付時に気づくので、不受理になることがあります。
用途地域に関しては、市区町村役場で事前に確認しておく必要があります。
☐営業できない地域
東京都の条例では、住宅集合地域においては深夜における酒類提供営業はできません。住宅集合地域とは、以下の地域を除く地域です。
・商業地域 ・近隣商業地域 ・工業地域 ・準工業地域 ・工業専用地域
☐営業可能な地域
住宅集合地域以外のでは営業可能ですが、工業専用地域では飲食店は作れないという制限があるので、実際の営業可能地域は
・商業地域 ・近隣商業地域 ・工業地域 ・準工業地域 となります。
ほとんどの場合は、商業地域又は近隣商業地域での営業となります。
☐保全対象地域
深夜における酒類提供飲食店営業では、保全対象施設はありません。
【構造的要件】
深夜における酒類提供飲食店営業についても営業所・設備の要件が定められています。
・客室の床面積は、一室の床面積を9.5平方メートル以上とすること。ただし、客室の一部のみである場合は、この限りではない。
・客室に見通しを妨げる設備を設けないこと(概ね100cmを超える衝立、間仕切り等を設けることはできません)。
・善良の風俗もしくは清浄な風俗環境を害し、又は少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと。
・客室の出入口に施錠の設備を設けないこと。ただし、営業所外に直接通ずる客室の出入口については、この限りではない。
・営業所内の照度が20ルクス以下とならないよう維持されるため必要な構造又は設備を有すること(照度計測の位置については、社交飲食店と同じ)
・騒音又は振動の数値が法第32条第2項において準用する法第15条の規定に基づく条例で定める数値(55デシベル)に満たないように維持されるため
 必要な構造又は設備を有すること。
<手数料>
深夜における酒類提供飲食店営業開始の届出の手数料は0円です。届出事項に変更が生じた際には、事後に届出が必要ですが、変更届も手数料は0円です。

Ⅲ.提出書類
1.深夜における酒類提供飲食店営業開始届出書
2.営業の方法を記載した書類
3.※メニュー案
4.※営業所周辺の概略図
5.※建物全部事項証明書
6.※物権契約書のコピー
7.●使用承諾書
8.※入居階平面図
9.営業所平面図
10.客室等求積図
11.営業所求積図
12.音響・照明図
13.定款のコピー(申請者が法人の場合のみ)
14.履歴事項全部証明書(申請者が法人の場合のみ)
15.住民票(本籍記載のもの、法人の場合は全役員分)
16.在留カードのコピー(表・裏、外国人の場合のみ)
17.誓約書
18.飲食店営業許可書のコピー
※は法定書類ではありませんが、要求される場合が多い書類です。●は場合により必要な書類。事前に所轄警察署に確認。
店の場所や、構造を確認して申請書類を作成したらお店のある場所の管轄警察署の生活安全課に書類を届出ます。
届出後10日を経過し、警察から不備等の連絡がなければ実際に営業を開始することができます。
許可証のようなものは交付されません。

Ⅳ.営業開始後にも必要なこと
変更届出の義務
深夜酒類提供飲食店営業開始後に以下の事項に変更があった場合には一定期間内に変更届出を提出する必要があります。
氏名及び住所(法人の場合は名称、住所、代表者の氏名)・・・変更後20日以内
営業所の名称・・・変更後10日以内
営業所の構造及び設備の概要の変更・・・変更後10日以内
※営業の新築、移築、増築等に該当し、その同一性が失われる場合には新規の届出が必要になります。
※営業をやめた場合は、営業の廃止後10日以内に廃止届出書の提出が必要です。