⧉ 遺言に関するQ&A Q1. 遺言にはどのようなことを定めることができますか? 身分に関する事項、相続に関する事項、相続財産の処分に関する事項、遺言執行に関する事項、その他の遺言事項について定めることができます。 Q2. 身分に関する事項の内容とは何ですか? 認知、未成年後見人の指定及び後見監督人の指定が挙げられます。 Q3. 相続に関する事項の内容とは何ですか? 推定相続人の廃除及び排除の取消し、相続分の指定又は指定の委託、特別受益の持戻しの免除、遺産分割の方法の指定又は指定の委託、遺産分割の禁止、共同相続人の担保責任の減免・加重、遺贈の減殺の順序・割合の定めが挙げられます。 Q4. 相続財産の処分に関する事項の内容とは何ですか? 遺贈、一般財団法人設立、信託の設定が挙げられます。 Q5. 遺言執行に関する事項の内容とは何ですか? 遺言執行者の指定又は指定の委託、遺言執行者の復任権に関する定め、遺言執行者が数人ある場合の執行方法に関する定め、遺言執行者の報酬に関する定めがあります。 Q6. その他の事項の内容とは何ですか? 遺言の撤回、祖先の祭祀主宰者の指定、保険金の受領人の変更が挙げられます。 Q7. 自書能力のない者が作成した遺言書は無効ですか? 自書能力とは、遺言者が文字を知り、かつ、これを筆記する能力を言います。自筆証書遺言を有効に作成するには、遺言当時に自書能力があることが必要であり、これが欠けている状況で作成された遺言は無効となります。 Q8. 病気等の事情で手を使うことができない人が口や足で遺言書を作成した場合は無効ですか? 自書とは、遺言者が自らの意思で筆記することを言いますが、口や足で作製した場合も自書であると考えられます。 Q9. 英語など外国語で作製された遺言は無効ですか? 民法上、遺言を日本語でしなければならないというきていはありませんので、外国語で遺言を作成した場合も有効と考えられます。 Q10.速記で作成された遺言は無効ですか? この場合も有効であると考えられます。ただ、一般人からみて遺言書の意思が判断できるようにしないと遺言書があっても後々のトラブルの原因となりかねません。速記のような形で残さないほうが賢明です。 Q11.カーボン紙を用いた複写の方法で記載した遺言は無効ですか? カーボン紙を用いて複写の方法で記載した遺言書については、自書の要件を満たすものとされています。(最判平5・10・19) Q12.遺言書の一部が自書でない場合の遺言の効力はありますか? 自筆証書遺言に添付した相続財産の目録以外の部分については、遺言書の全文を自署する必要があるので、自書でない自筆証書遺言は無効です。もっとも、自書でない部分が付随的で付加的意味を有するにすぎず、自書部分とそうでない部分との一体性・関連性が明らかにされ、遺言の趣旨が十分に表示されている場合には、自書性が保たれていると考える余地があります。この点に関し、遺言の対象や内容を明確にするために図面等を用いることが一切否定されているわけではなく、他人が作成した図面等を用いた場合であっても、図面等の上に自書の添え書きや指示文言等を付記し、あるいは自筆書面との一体性を明らかにする方法を講じるなどしている場合に、なお自書性は認められるとした判例もあります。 Q13.日付の記載が要求される趣旨は何ですか? 遺言能力の有無を確定する基準として、また、内容の抵触する複数の遺言の先後を決定するための基準として不可欠の要素になります。 Q14.日付の記載場所は指定されていますか? 日付を記載する場所は、明文上の規定はありません。遺言書の本文中に記載されていらば問題ありませんが、日付が遺言書本文と同一の書面ではなく、遺言書を封入した封筒にだけ記載されている場合の有効性が問題となります。遺言者が遺言の全文及び氏名を自書してハンコを押し、これを封筒に入れてその印章をもって封印し、封筒に日付を自書した場合において遺言は有効とした判例があります。一方、封印されない封筒の裏面にのみ日付の記載があり、遺言の全文、署名捺印のある遺言書本体には日付の記載のない遺言は無効であるとした判例があります。 Q15.日付に誤記があった場合はの遺言は無効ですか? 「昭和五拾四拾年」という存在しない日付の記載は、「昭和五拾四年」の誤記であることが明らかであるとして、遺言は無効でないとした判例があります。(東京地判平3・9・13) Q16.氏名の自書が要求される趣旨は何ですか? 遺言者本人を明確にし、遺言内容が遺言者の真意に出たものであることを明らかにするためです。 Q17.氏名につき、氏又は名だけの記載でも遺言は有効ですか? 氏名を記載することが原則ですが、氏又は名だけの記載であっても遺言者本人による署名であることが明らかであればという条件付きの下、遺言は有効とされます。 Q18.サインは「押印」として認められますか? 認められないというべきです。押印は指印をもって足りるとする最高裁判例や無国籍の白系ロシア人の遺言について押印がなくても有効とした最高裁判例など要件を緩和した事例もありますが、日本人については、なお厳格に解するべきです。日本人の慣行として、重要な文書には署名捺印することで完結すると解されています。押印に代えて簡略なサインで済ませるということは、慣行や法意識が定着しているとは認められないという考えです。 Q19.押印のない遺言の効力は? 押印のない遺言書は無効です。ただし、英文の遺言書に遺言者本人の署名はあるが押印はなかったという場合、遺言ん者が日本に帰化したのが遺言作成の1年9か月前であって、サインに確実性を認める欧米人の一般常識に従ったものであったことや、英文のサインは偽造変造が困難であって押印がなくても遺言書の真正を危うくするおそれがほとんどないことなどから、遺言を有効とした判例もあります。 Q20.加除訂正に方式違背があった場合の遺言の効力はどうなりますか? 方式違背の場合、遺言書は加除変更がなされなかったものとして扱われます。その結果、加除変更前の文言に従って遺言事項を解釈することになり、遺言そのものが無効となることはないと考えられます。この点に関し、多くの加除訂正等のある自筆証書遺言につき、加除訂正は民法所定の方式に適合しないが、遺言内容の判読が可能である限り、その書き込みより遺言の効力は影響を受けないとした判例があります。 Q21.公正証書遺言で証人2名以上の立合いを要求するのは何故ですか? 遺言者に人違いのないこと、遺言者の精神状態に問題がないこと、遺言者が真意に基づいて遺言の趣旨を口授したこと、公証人による筆記が正確であることを確認するためです。 Q22.証人の立会いは、証書作成の開始から終了まで必要ですか? 証人は、公正証書遺言の作成手続の開始から終了まで間断なく立会うことが必要です。 Q23.共同遺言を禁止しているのはどうしてですか? 遺言は、遺言者の自由な独立した最終意思に基づきなされるべきであるところ、共同遺言には他人の意思の影響を受ける恐れがありますし、共同遺言者の各自が事由に遺言を撤回することができなくなってしまいますので、最終意思の確保という遺言の趣旨が没却されてしまうため、共同遺言を禁止しています。 ≪ 遺言・相続 成年後見≫