成年後見

Ⅰ.成年後見制度

成年後見制度とは、自分ひとりで判断することが難しい方について、家庭裁判所によって選ばれた成年後見人等が、身の回りに配慮しながら財産の管理や福祉サービス等の契約を行い、ご本人の権利を守り生活を支援する制度です。

(成年被後見人の意思の尊重及び身上の配慮)
民法第858条
成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。

 

制度を支える理念
「ノーマライゼーション・自己決定の尊重という理念と本人の保護の調和」が求められています。
そのため、単に財産を管理するに止まらず、本人の生活を支えること(身上配慮義務)が後見人の役割とされています。
1.ノーマライゼイション

高齢者や障害者であっても特別扱いをしないで、今までと同じような生活をさせようとする考え方

2.自己決定の尊重

本人の自己決定を尊重し、現有能力(残存能力)を活用しようという考え方

3.身上配慮義務

本人の状況を把握し配慮する義務。

 

Ⅱ.法定後見と任意後見

<1>法定後見制度
判断能力が低下したときに、家庭裁判所に後見人等を選任してもらい、その人に支援してもらいます。申立て時の判断能力の程度に応じて、
後見・保佐・補助の3つの類型があり、支援者をそれぞれ後見人・保佐人・補助人といいます。

 

【成年被後見人】

精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者で、家庭裁判所によって後見開始の審判を受けた者。
後見開始の審判は、本人・配偶者・四親等内の親族・未成年後見人・未成年後見監督人・保佐人・保佐監督人・補助人・補助監督人又は検察官の請求によります。(親族等の申立人がいないときは市区町村長)
成年被後見人には、(法定代理人)成年後見人が付されます。家庭裁判所は、後見開始の審判をする際、職権で、成年後見人を選任します。成年後見人に、代理権・追認権・取消権を有しますが、同意権はありません。なぜなら、成年被後見人に同意をを与えても、その同意の通りに行為をするという期待可能性がないと解されるからです。そのかわり、成年被後見人には何もさせず、成年後見人が代理権によって全面的に面倒を見るようになっています。したがって、たとえ後見人が同意しても成年被後見人単独では有効な法律行為はできません。
原則として、成年被後見人の行為は取消すことができます。取消しは、誰でも行うことができるわけではなく取消権者のみが行うことができます。取消権者は、制限行為能力者本人又はその代理人、承継人若しくは同意することができる者となります。ただし、例外的に日用品の購入その他の日常生活に関する行為は取消の対象とはなりません。

 

【被保佐人】

精神上の障害により事理弁識能力が著しく不十分である者で、家庭裁判所によって保佐開始の審判を受けた者。
保佐開始の審判は、本人・配偶者・四親等内の親族・後見人・後見監督人・補助人・補助監督人又は検察官の請求によります。(親族等の申立人がいないときは市区町村長)
被保佐人の保護者は保佐人です。家庭裁判所は、保佐開始の審判をするときは、職権で、補佐人を選任します。保佐人の種類、員数、辞任、解任、欠格事由などは成年後見人に関する規定が準用されています。家庭裁判所は、必要があると認めるときは、被保佐人、その親族若しくは保佐人の請求により又は職権で、保佐監督人を選任することができます。保佐監督人の種類、員数、辞任、解任、欠格事由などは後見監督人に関する規定が準用されています。保佐人は民法13条第1項所定の重要な行為について、同意権・取消権・追認権を有します。
また、家庭裁判所は、当事者が申立てにより選択した「特定の法律行為」について個別の審判により、代理権を保佐人に付与することも可能です。本人以外の者の請求により前項の審判をする場合には、本人の同意が必要です。
被保佐人は、原則として単独で法律行為をすることができますが、13条1項が定める行為をするには、保佐人の同意が必要です。保佐人の同意を要する行為について、保佐人の同意又はこれに代わる家庭裁判所の許可を得ないでした行為は、取消すことが可能です。取消しは、誰でも行うことができるわけではなく取消権者のみが行うことができます。取消権者は、制限行為能力者本人又はその代理人、承継人若しくは同意することができる者となります。日用品の購入など日常生活に関する行為は被保佐人が単独で可能です。

 

【被補助人】

精神上の障害により事理弁識能力が不十分である者で、家庭裁判所によって補助開始の審判を受けた者。
保佐開始の審判は、本人・配偶者・四親等内の親族・後見人・後見監督人・保佐人・保佐監督人又は検察官の請求によります。(親族等の申立人がいないときは市区町村長)なお、本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意が必要です。
家庭裁判所は、補助開始の審判をするときは、職権で、補助人を選任します。補助人の種類、員数、辞任、解任、欠格事由などは成年後見人に関する規定が準用されています。家庭裁判所は、必要があると認めるときは、被補助人、その親族若しくは補助人の請求により又は職権で、補助監督人を選任することができます。補助監督人の種類、員数、辞任、解任、欠格事由などは後見監督人に関する規定が準用されています。家庭裁判所は、補助開始の審判をする場合には、同時に、13条1項所定の「特定の法律行為の一部」について補助人の同意権又は代理権の一方若しくは双方を付与する旨の審判をしなければなりません
補助人の同意を要する行為について、被補助人が補助人の同意又はこれに代わる家庭裁判所の許可を得ないでした行為は、取消すことが可能です。取消しは、誰でも行うことができるわけではなく取消権者のみが行うことができます。取消権者は、制限行為能力者本人又はその代理人、承継人若しくは同意することができる者となります。

 

<2>任意後見制度
任意後見制度は、まだしっかりと自分で判断ができるうちに、自分の判断能力が衰えてきた時に備えて、あらかじめ支援者(任意後見人)を誰にするか、将来の財産管理や身の回りのことについてその人に何を支援してもらうか、自分で決めておくことができる仕組みです。
今は大丈夫だけれども、老化や認知症、事故で脳に損傷を受けてしまったり等、判断能力が十分に発揮できなくなってしまうことは誰にでもありうることです。
「任意後見制度」は、そのような場合に備えて、「誰に」「どんなことを頼むか」「自分で決めておく」ことで、将来にわたって自分の希望する暮らし方を実現させる方法のひとつです。

任意後見契約
本人の判断能力が低下したときに、何をしてほしいか(法律行為)を任意後見受任者との間で、あらかじめ契約しておきます。
内容は@身上保護に関する法律行為(介護契約、施設入所契約、医療契約の締結や解除など)A財産管理に関する法律行為(預貯金の管理、払い戻し、不動産などの重要な財産の処分、遺産分割、賃貸借契約の締結・解除など)について代理権を与える事項を公正証書で契約します。なお、この契約は、家庭裁判所に任意後見監督人の選任の申立てをし、任意後見監督人が選任されてから効力が発生します。

継続的見守り契約
見守り契約とは、本人が認知症でなく判断能力が十分な間は、任意後見受任者が定期的に本人と連絡をとりあい、継続的な見守りを行う契約をいいます。任意後見契約は、契約締結から効力発生までに相当期間を要する場合があります。見守り契約を締結しておけば、信頼関係を維持し続け、ご本人の異変にいち早く気づき適切な時期に任意後見契約を発効させることができるため、ご本人の権利擁護につながると考えています。

委任契約(財産管理含む)
財産管理等委任契約とは、認知症でなく判断能力が十分な間から任意後見受任者の支援を必要とする行為について定期的な見守りだけでなく、代理権を与えて財産管理を委任する契約をいいます。判断能力はしっかりしていても、身体が不自由な方や財産管理が不安な方のための契約です。

死後事務委任契約
死後委任契約とは、ご本人が死亡した後に、ご本人の希望する手続きを委任する契約をいいます。ご本人が死亡すると任意後見契約は終了しますので、財産管理の計算、引き渡しの事務などは任意後見人が行うこととなりますが、葬儀、埋葬、死亡届の諸手続き家財道具の処分、親族への連絡などの事務については任意後見人の事務の範囲外となります。そこで、これらを委任するのが死後事務委任契約です。

 

任意後見契約の運用上の3類型
(1)将来型 ⇒ 任意後見契約のみ単独で締結するもの
(2)即効型 ⇒ 任意後見契約締結後、速やかに任意後見監督人を選任することを目的とするもの
(3)移行型 ⇒ 任意後見契約と財産管理等委任契約とセットで締結するもの

 

任意後見契約の活用方法
(1)財産管理等委任契約との併用
(2)見守り契約との併用(専門家が受任者となるとき)
(3)死後の事務の委任契約との併用
@法定後見の場合は、本人の死亡によって成年後見人等の権限は消滅してしまい、死後の事務に関して困難な問題が生ずるのに対し、任意後見の場合は、死後の事務の委任契約も有効であると解されている。
A任意契約終了後の事務なので、任意後見の代理権目録には記載できない。任意後見契約書の本文中に任意代理条項として記載するか、あるいは別途「死後の委任事務契約」を締結することになる。
B委任できる死後事務の内容
a 短期的な事務
@遺体の引き取り
A火葬・埋葬
B葬儀
C入院・入所費用等の生前債務の支払い
D入所施設等の居住空間の明け渡し、及びこれに伴う家財道具、身の回りの生活用品等の処分
b 委任することは可能だが相続法理との間で問題になりやすい事務
@永代供養契約の締結
A世話になった人への謝礼
c 長期にわたる事務の委任は原則として避ける

 

Ⅲ.任意後見契約までの進め方

1.任意後見の相談における特徴
(1)相談の動機と相談者
@相談の動機は、将来への不安から
・認知症になったり、身体が不自由になった場合の生活が不安。
・入院したら、入院費の支払いや自宅の監理はどうすればいいのか。
・万一の際、葬儀や供養を頼める人がいない。
A相談者の種類
・子どものいない高齢者や一人暮らしの高齢者
・知的障害者の親
・子供がいても頼りなく、迷惑をかけたくない
(2)相談者の関心事
・どこで、誰に頼んだらいいのか
・費用はいくらくらいかかるか
・本当に安心してまかせられるのか

 

2.契約締結へ向けての準備
(1)本人との面談 ⇒ 本人の状況を把握する。
@その際の注意点
・本人に信頼されることが重要で、何度も面談する必要があります。契約することを急がない。
・本人が信頼している人を間に入れると話は進めやすい。
・相手の話しを聞いてあげることが大切。
A財産の種類と内容、収入と支出の確認
B親族関係の確認
C代理権の確認、ライフプランの確認
D本人の判断能力の確認
E報酬、解約に関する重要事項の説明
(2)契約締結のための重要書類の収集
@財産目録を作成 ⇒ 不動産登記事項証明書、通帳、預貯金証書、各種証券、取引残高報告書等
A公正証書作成準備 ⇒ 戸籍謄本、住民票等
Bその他 ⇒ 各種保険証、福祉手帳、年金手帳等

 

3.契約書案の作成
(1)代理権目録について
@代理権目録に記載できる事項
・財産管理に関する法律行為
・身上監護に関する法律行為
A代理権目録に記載できない事項
・介護などの事実行為
・婚姻や認知などの代理になじまない行為
・抽象的な記載で身上監護に関する委任か、財産管理に関する委任か明確でない事項
・「自己の」事務でない事務
Bその他
・同意権、取消権のないことに注意する。
・契約締結後、目録の内容に漏れがあっても追加することはできません(要注意)。
(2)財産目録について
(3)ライフプランについて
@契約条項に「することができない事項」を記載しておく
・介護、入院、終末医療、葬儀、埋葬等に関する本人の希望等を記載する。
A最低限以下の事項は記載する
・在宅か施設入所のどちらを望む
・施設入所の場合、自宅はどうするか
・葬儀や墓地はどうするか
・入院時や死亡時に連絡してほしい人
(4)報酬について
・契約書に記載する(日額、月額)
(5)同意を要する旨の特約について

 

4.契約の締結
(1)契約の締結場所 ⇒ 自宅、公証役場、施設等
(2)公正証書作成のための必要書類と公証人の費用について

 

5.任意後見受任者について
(1)誰がなるのか
@受任者の資格 ⇒ 本人の家族、友人、知人、弁護士・司法書士・行政書士等の法律の実務家、社会福祉士等の福祉専門家、法人も可
A受任者が複数の場合
・共同代理の場合は、契約は1個である
・単独代理の場合は、複数の契約となる
・予備的受任者の定めの可否
(2)任意後見受任者の地位
@以下の場合には、任意後見受任者にも一定の権限が認められる
・本人の判断能力に衰えが出始め、任意後見契約による支援をする必要がある場合には、家庭裁判所の後見監督人選任の申立てをする。
・本人の状況が大きく変わり、当初予定していた任意後見契約では難しく、それよりも法定後見制度を利用する方がいい状況となった場合は、法定後見の申立てをする。
・令和元年5月24日、戸籍法の一部が改正され、任意後見受任者も死亡届の届出人となることが可能となった。

 

Ⅳ.法定後見人の職務

1.就任直後の職務
(1)登記事項証明書の取得
@成年後見人の登記事項証明書を取得する
・成年後見人就任にあたり、金融機関等への届出のために複数枚取得しておく。
(2)本人の身上面・財産面の情報収集
@本人の所有不動産、預貯金口座、株券などに関する情報を収集する。
Aサービスを受けている介護サービスの状況などを確認する。
B預貯金通帳、権利証、実印、証券、保険証、年金手帳、障害手帳等の引き渡しを受ける。
C行政官庁に対する調査について
・医療保険、介護保険などについて調査や確認をするとともに、後見人の就任及び書類の送付先を後見人の住所地に変更するなどの届出。
・年金についても同様に届出を行う。
(3)資産調査・財産目録の作成
※就任後、1か月以内に作成する。間に合わない場合は、家庭裁判所へ連絡する。
@不動産について
・登記識別情報(権利証)などを確認し、法務局で登記簿謄本を取得し、権利証の内容と照合しておく。
A銀行、郵便局の預貯金と借入金について
(金融機関へは成年後見人に就任したことによる届出が必要)
・後見登記事項証明書、後見人の実印・印鑑証明書、本人の届出印及び通帳の提出と提示。
・口座名義の変更と取引印の届出をする。
・取引照会をするか、成年後見人就任の日を基準日として残高証明書を取得する。照会結果や残高証明書と預貯金通帳を確認し、預貯金通帳で紛失しているものがあれば再発行手続をする。
・借入金があれば借入先、借入日、金額、利息、返済方法、返済状況、担保、保証人等を把握し、対応を検討する。
B株式その他の有価証券について
・証券会社や信託銀行の取扱いになっていることが多いので、証券会社等に成年後見人としての届出を行うとともに、取引照会をして内容を確認する。
C銀行の貸金庫について
・成年後見人の届出をするとともに、後見人でも開扉できるよう手続をする。
(4)収入・支出の把握
@収入は、年金、不動産収入、株式配当、預貯金利息等で、これらは普通預貯金通帳の収入欄等で概ね把握することができる。
A支出は、税金、家賃、公共料金その他の生活費等で、普通預貯金通帳の支出欄や領収書等で把握する。
(5)当面の生活費などに必要な現金の確保
@当面の生活費や後見事務の実費として必要な現金を預貯金口座から払い出しておく。
A現金は、金銭出納帳に収入・支出を記載し、領収書等を保管して使途を明確にしておく。
(6)家庭裁判所への財産目録・年間収支予定表を家庭裁判所へ提出する。

 

2.就任中の職務
(1)財産管理事務
□ 職務の内容
@必要費の支払い
・財産管理事務の中で最も基本的な事務が、通帳記帳の方法による入出金の管理である。
(預貯金を管理する場合、本人名義とするか、成年後見人名義とするか)
・施設入所費や水道光熱費など必要な費用で、口座引き落としができるものは、その手続をとっておくのが賢明。
・年金が振り込まれていない場合は、「現況届」を提出しているか確認する。提出するのを怠ると年金の支払いはストップしてしまう。
・口座引き落としができない費用の支払いについては、口座から振り替えるか、手許現金から支払う。
・成年後見人自身が本人のために支出した費用は、適宜小口現金から支出し、金銭出納帳に記載する。
(公共交通機関使用が原則。タクシーは夜中等やむを得ない場合のみ)
A本人所有不動産の管理
・家屋の修繕やバリアフリーにするための増改築等も成年後見人の職務となる。
・一人暮らしの本人が施設に入所してしまった場合などは、本人の自宅の定期的な見回りが必要であるし、庭の手入れなど近所の方に迷惑をかける前に行う必要がある。
・本人所有のアパート等があれば、その賃料の管理もしなければならない。
・本人の入院費等を賄うため、不動産の売却をしなければならない場合もある。(本人の自宅売却は、家庭裁判所の許可が必要)
B遺産分割協議を行うこと
C利殖を目的として証券取引や先物取引を行なったり、リスクの伴う金融商品を購入することは成年後見人の職務ではない。
D本人財産にCのような証券類がある場合の対応
・元本が保証されない契約は、できるだけ早急に解約し、預貯金に入金する。
・本人の意思を尊重して継続保有する。
・相場状況を勘案して、適時に解約する。
E確定申告、納税等も成年後見人の職務となる。
□ 居住用不動産の処分について
@審判申立てには、相手方と金額が確定している必要があり、申立書には、契約書案、価格の相当性を証する書面(不動産の査定書、路線価写し、固定資産評価証明書写し等)を添付する。
※不動産処分には、白紙解約できる旨の条項を入れる。
※家屋処分する際に仏壇がある場合は、専門業者に依頼する。
□ 利益相反行為
成年後見人と本人との間で、利害が対立する場合は、特別代理人や後見監督人の選任が必要となり、特別代理人・後見監督人が成年後見人に代わり事務処理を行う。
(2)身上監護事務
□ 職務の内容
@介護契約、施設入所契約、医療契約など本人の身上監護を目的として、次のような事務を行う。
1.治療、入院などに関して病院と契約する。
2.健康診断などの受信手続をする。
3.住居の確保をする。
4.施設の入退所などの手続をする。
5.施設・病院などの処遇を監視し、本人に不利益がある場合は改善を求める。
6.要介護認定や更新の手続をし、介護サービス事業者とのサービス契約を締結する。
7.介護サービスの内容が契約通りか確認し、異なるときは改善を求める。
8.教育やリハビリに関する契約を締結する。
9.訪問をして本人の状況に変わりがないか「見守り」をする。
A以下のことにも注意が必要
・本人に対する実際の介護・看護行為等の事実行為は成年後見人としての職務には含まれない。
・本人の戸籍に関する手続のうち、成年後見人が本人に代わって婚姻や養子縁組の届出をすることはできないが、本人に代わって裁判上の離婚や離縁の訴えをすることはできる。
B医療行為の同意問題
・医療行為の同意権がないことは明らかであるが、様々な場面で医療機関より同意を求められることがある。
C入院契約や老人ホーム等の入所契約と身元保証・身元引受の問題について
□ 福祉サービスの利用について
@本人の必要に応じて、次のような福祉サービスを利用するための情報収集や各種手続を本人に代わって行う。
・ケアマネージャーに依頼して介護保険によるサービスを利用したり、老人ホームなどの施設を探す。
・知的障害者、精神障害者の生活支援、療養のための福祉サービスを利用する。
A福祉サービス利用にあたっての相談窓口として、次のようなものがある。
・地域包括支援センター
・各福祉センター
・福祉事務所
・市町村の高齢者福祉、障害者福祉の窓口
・社会福祉協議会
・社会福祉士会
(3)家庭裁判所への報告
@成年後見人の事務を監督するため、家庭裁判所は、いつでも成年後見人に対して後見事務の報告を求めることができる。
家庭裁判所への報告の際、あわせて報酬付与審判申立てをする。
報酬付与申立書の添付書類としては、
@報酬付与申立事情説明書
A後見等事務報告書
B財産目録及び報告時点の預貯金等の残額を示す資料
A以下の場合にも家庭裁判所へ報告する。
@重要な財産の処分、遺産分割、相続放棄など財産管理の方針を大きく変更するとき
A本人の入院・氏名・住所・本籍又は後見人の氏名・住所が変わったとき(併せて東京法務局登記課に変更の登記を申請する)
B療養看護の方針を大きく変えるとき
(4)その他の事務
@後見日誌をつける
・日々の業務記録として必ずつけること。成年後見人として行ったことの裏付けとなる。
A本人宛の郵便物の転送届(後見人宛て)1年限りなので、毎年行う必要がある。
B後見監督人がいる場合の注意点
・後見監督人がついた場合の成年後見員の権限に注意が必要となる。元本の領収を除く民法13条1項の行為をする場合は、監督人の同意が必要。
・財産管理の方針を変更したり、療養看護の方針を変更する場合も必ず後見監督人に相談し、その同意を得ること。
C本人の親族とのかかわり方について
・適度な距離を保ちつつ、コミュニケーションを図ること。万一の際に同意を得ることができるようにしておく。

 

3.任務終了に関する職務
(1)終了事由
@成年後見人には、以下の事由により任務が終了する。
・本人の死亡
・成年後見人の辞任(正当な事由がある場合、家庭裁判所の許可を得て辞任することができる)
・成年後見人の解任(成年後見人に不正な行為や著しい不行跡などがあった場合、家庭裁判所より解任されることがある)
・後見開始の審判の取消し(本人について後見開始の原因が解消されたときには、家庭裁判所は、後見開始の審判を取消し、後見終了する)
・成年後見人の欠格事由発生(成年後見人が破産などしたとき。この場合は、新たな成年後見人が家庭裁判所によって選任される)
A以上のような理由で後見の任務が終了しても、成年後見人は以下の4つの事務が残る。
・財産目録作成
・成年後見登記の申請
・家庭裁判所への報告(報酬付与の審判申立て)
・財産の引き渡し
(2)財産目録の作成(後見終了後2か月以内)
@就任中に作成するものと同じ
・財産の変動が生じていることがわかりやすくなっているものがよい。
※成年後見人は必ず財産目録を作成しなければならないが、保佐・補助の場合は、金銭の監理の代理権が付与されていなければ財産目録作成の必要はない。
(3)成年後見登記(本人死亡の場合)
@成年後見人の辞任や解任、後見開始の審判の取消しは、家庭裁判所からその旨の登記が東京法務局に対して嘱託されるが、本人死亡の場合には、この旨の登記を行う必要がある。
A添付書類として必ずしも死亡の記載のある戸籍(除籍)謄本でなくても死亡診断書の写しでよい。
(4)財産の引き渡し
@辞任あるいは解任された成年後見人は、後任の成年後見人に本人の財産等を速やかに引き渡さなければならない。
A本人の死亡により後見が終了した場合には、相続人の有無や人数、遺言の内容により取扱いが異なる。
B成年後見人が死亡して後見が終了した場合、以上の手続は成年後見人の相続人が行うことになる。
(5)家庭裁判所への終了報告
@成年後見人の職務が終了した場合には、家庭裁判所に対して、その旨の報告を行う。
A内容としては、
・業務に関する後見事務報告
・財産目録による報告
B終了事項が記載された後見登記事項証明書や財産引き渡しの受領書なども添付することになる。
(6)葬儀と葬儀費用の問題(相続人がいない場合)
@死亡に関する諸届の問題
・後見人等は、死亡届の届出義務者ではなかったが、戸籍法の改正により「後見人、保佐人、補助人、任意後見人」が届出ができるようになった。
A葬儀の主催に関する問題
・善処義務の一環として行うことになる。
・終了後の善処義務について
B葬儀費用の支出に関する問題
・特に銀行との関係で、死亡がわかると凍結されてしまうことから問題になる。
・対応方法
C永代供養料の支払いや納骨は、善処義務の範囲内とは考えられない。