労働者派遣業

Ⅰ.労働者派遣とは

労働者派遣とは、派遣元事業主が自己の雇用する労働者を、その雇用関係の下に、派遣先の指揮命令を受けて、派遣先のために労働に従事させることをいいます。労働基準法などの労働基準関係法令などについては、一部は派遣先が責務を負いますが、基本的には 派遣労働者の雇用主である派遣元事業主が責務を負います。

 

<派遣の場合>

@労働者と労働契約を結ぶのは?

派遣元事業主

A賃金を支払うのは?

派遣元事業主

B社会保険・労働保険の手続を行うのは?

派遣元事業主

C勤務先は?

派遣先のA社

D仕事上の指揮命令を行うのは?   

派遣先のA社

E年次有給休暇を付与するのは?

派遣元事業主

F休業の際の休業手当を払うのは?

派遣元事業主

【参考】 請負
請負の場合は、請負会社が作業の完成についてすべての責務を負います。 請負会社が請け負った作業について、発注者が請負労働者に対して指揮命令をすることはできません

 

Ⅱ.労働者派遣の事業運営

(1)労働者派遣事業の許可
労働者派遣事業を営むためには労働者派遣事業の許可が必要です。
平成27年の労働者派遣法改正で一般労働者派遣事業(許可制)・特定労働者派遣事業(届出制)の区別が廃止され、すべての労働者派遣事業が厚生労働大臣の許可制となりました。
(2)派遣を行ってはならない業務
@港湾運送業務
港湾運送業務とは、港湾における、船内荷役・はしけ運送・沿岸荷役やいかだ運送、船積貨物の鑑定・検量等の業務(港湾労働法第二条第二号に規定する港湾運送の業務)です。
(業務がなされるのは港湾に於ける業務であることが前提となります。また、機械の利用によるか人力によるかは関係ありません)。
A建設業務
建設業務とは、建築工事現場における、土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの準備の作業に係る業務です。
B警備業務
警備業務とは、事務所、住宅、興行場、駐車場、遊園地等における、または運搬中の現金等に係る盗難等や、雑踏での負傷等の事故の発生を警戒し、防止する業務(警備業法第二条第一項各号に掲げる業務)です。
(以下の業務の1つないし幾つかを複合的に業務の一部としている場合に禁止業務となります)。
C病院などにおける医療関連業務
医師、歯科医師、薬剤師の調剤、保健婦、助産婦、看護師・准看護師、栄養士等の業務
ただし、以下の場合は可能である。
・紹介予定派遣
・病院・診療所等(介護老人保健施設または医療を受ける者の居宅において行われるものを含む)以外の施設(社会福祉施設等)で行われる業務
・産前産後休業・育児休業・介護休業中の労働者の代替業務
・就業の場所がへき地・離島の病院等及び地域医療の確保のため都道府県(医療対策協議会)が必要と認めた病院等における医師の業務
D弁護士等の「士業」業務
弁護士、外国法事務弁護士、司法書士、土地家屋調査士の業務や、建築士事務所の管理建築士の業務等(公認会計士、税理士、弁理士、社会保険労務士、行政書士等の業務では一部で労働者派遣は可能)
上記各業務に関しては、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」第四条、及び「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行令」第二条で決められています。
(3)日雇派遣(30日以内)の原則禁止
日雇労働者(派遣元事業主との労働契約が30日以内の労働者)を派遣することはできません。
【以下の@・Aのいずれかに該当する業務・場合は例外】
@日雇派遣の例外「業務」
◆ソフトウェア開発 ◆機械設計 ◆事務用機器操作 ◆通訳、翻訳、速記 ◆秘書 ◆ファイリング ◆調査 ◆財務処理 ◆取引文書作成 ◆デモンストレーション ◆添乗 ◆受付・案内 ◆研究開発 ◆事業の実施体制の企画、立案 ◆書籍などの制作・編集 ◆広告デザイン ◆OAインストラクション ◆セールスエンジニアの営業、金融商品の営業
A日雇派遣の例外の「場合」
日雇労働者が以下のいずれかに該当
・60歳以上の人
・雇用保険の適用を受けない学生
・副業として従事する人 (生業収入が500万円以上の人に限る)
・主たる生計者以外の人 (世帯収入が500万円以上の人に限る)
(3)離職後1年以内の労働者の派遣禁止
離職した労働者を離職後1年以内に元の勤務先へ派遣労働者として派遣することはできません。(ただし、60歳以上の定年退職者は除く)
※離職した労働者とは、社員・パート・アルバイトのすべてに該当します。
(4)グループ企業派遣の8割規制
派遣元事業主が属するグループ企業への派遣は全体の8割以下にすることが必要です。
(5)マージン率などの情報提供
インターネットなどにより、派遣元事業主のマージン率や教育訓練に関する取り組み状況などの情報提供が必要です。

 

Ⅲ.派遣契約の締結にあたって

(1)労働者派遣の期間制限
平成27年の法改正の前までは、いわゆる「26業務」への労働者派遣には期間制限を設けていませんでしたが、法改正後んい締結された労働者派遣契約に基づく労働者派遣には、すべての業務で、次の2つの期間制限が適用されるようになりました。
@派遣先事業所単位の期間制限
派遣先の同一の事業所に対し派遣できる期間(派遣可能期間)は、原則3年が限度です。派遣先が3年を超えて派遣を受け入れようとする場合は、派遣先の事業所の過半数労働組合などからの意見をきく必要があります。
※過半数労働組合が存在しない場合、事業所の労働者の過半数を代表する者
A派遣労働者個人単位の期間制限
同一の派遣労働者を、派遣先の事業所における同一の組織単位に対し派遣できる期間は、3年が限度となります。
※組織単位を変えれば、同一の事業所に、引き続き同一の派遣労働者を(3年を限度として)派遣することができますが、事業所単位の期間制限による派遣可能期間が延長されていることが前提となります。(この場合でも、派遣先は同一の派遣労働者を指名するなどの特定目的行為を行わないようにする必要があります。)
※派遣労働者の従事する業務が変わっても、同一の組織単位内である場合は、派遣期間は通算されます。

「事業所」・「組織単位」の定義

事業所

・工場、事務所、店舗等、場所的に独立していること ・経営の単位として人事・経理・指導監督・働き方などがある程度 独立していること
・経営の単位として人事・経理・指導監督・働き方などがある程度 独立していること
・施設として一定期間継続するものであること などの観点から、実態に即して判断されます。

組織単位

いわゆる「課」や「グループ」など、
・業務としての類似性、関連性があり、
・組織の長が業務配分、労務管理上の指揮監督権限を有する
ものとして、実態に即して判断されます。

B期間制限の例外
以下の場合は、例外として期間制限の対象外となります。

・派遣元事業主に無期雇用される派遣労働者を派遣する場合
・60歳以上の派遣労働者を派遣する場合
・終期が明確な有期プロジェクト業務に派遣労働者を派遣する場合
・日数限定業務(1か月の勤務日数が通常の労働者の半分以下かつ10日以下であるもの)に派遣労働者を派遣する場合
・産前産後休業、育児休業、介護休業等を取得する労働者の業務に派遣労働者を派遣する場合

(2)事前面接の禁止
派遣先が派遣労働者を指名すること、派遣就業の開始前に面接を行うこと、履歴書を送付 させることなどは原則的に禁止されています。
派遣元事業主はこれらに協力をしてはなりません。 ただし、紹介予定派遣の場合は例外です。
<紹介予定派遣とは>
・一定の労働者派遣の期間(6か月以内)を経て、直接雇用に移行することを念頭に行われる派遣を紹介予定派遣といいます。
・労働者派遣事業の許可と職業紹介事業の許可が必要です。
・紹介予定派遣を行う場合は、紹介予定派遣であることを派遣労働者に明示することが必要です。
・派遣先での直接雇用に至らなかった場合、派遣労働者の求めに応じて派遣先に理由を確認し、派遣労働者に明示することが必要です。

 

Ⅳ.派遣元事業主と派遣労働者との労働契約について

(1)雇入れ前の待遇に関する事項などの説明
労働契約締結前に、労働者に対して以下の説明が必要です。
@派遣労働者であること
A雇用された場合の賃金の見込み額などの待遇に関すること(書面などにより説明)
B派遣元事業主の事業運営に関すること
C労働者派遣制度の概要
(2)派遣先の労働者との均衡待遇の確保
以下を勘案して派遣労働者の賃金を決定するように配慮することが必要です。
@派遣先で同種の業務に従事する労働者の賃金水準
A派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力、経験など
教育訓練や福利厚生などについても派遣先の労働者との均衡に向けた配慮が必要です。
派遣労働者から求めがあった場合、上記の点について、派遣労働者と派遣先で同種の業務に従事する労働者の待遇の均衡を図るために考慮した内容を派遣労働者に説明する必要があります。
(3)労働条件、就業条件、派遣料金の明示
労働契約の締結時、派遣労働者に対し、書面などにより労働条件(賃金・休日など)や派遣料金額の明示が必要です。派遣就業前に派遣労働者に対し、あらかじめ書面などにより就業条件(業務内容・場所など)の明示が必要です。この際、期間制限違反が労働契約申込みみなし制度の対象となる ことも明示しなければなりません。
(4)社会・労働保険の適用
社会・労働保険の適切な加入が必要です。派遣労働者と派遣先に対し、社会・労働保険の適用の有無を通知することが必要です。未加入の場合には、その理由を通知することが必要です。

 

Ⅴ.雇用の管理

(1)苦情の処理
派遣元事業主は、派遣労働者からの苦情の処理体制を整備しなければなりません。
(2)派遣元責任者の選任、派遣元管理台帳の作成
派遣元事業主は、派遣元責任者を選任し、派遣元管理台帳を作成しなければなりません。
(3)雇用安定措置
派遣元事業主は、同一の組織単位に継続して3年間派遣される見込みがある派遣労働者に対し、派遣終了後の雇用を継続させる措置(雇用安定措置)を講じる義務があります。
(1年以上3年未満の見込みの派遣労働者については、努力義務となります)

雇用安定措置とは

@派遣先への直接雇用の依頼
A新たな派遣先の提供(合理的なものに限る)
B派遣元事業主による無期雇用
Cその他雇用の安定を図るために必要な措置

 

Ⅶ.均衡待遇の推進

派遣労働者と、派遣先で同種の業務に従事する労働者の待遇の均衡を図るため、派遣元事業主と派遣先それぞれに責務が課されます。
(1)派遣元事業主が講ずべき措置
@均衡を考慮した待遇の確保
派遣元事業主は、派遣先で同種の業務に従事する労働者との均衡を考慮しながら、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生の実施を行うよう配慮する義務があります。
A待遇に関する事項等の説明
派遣労働者が希望する場合には、派遣元事業主は、上記の待遇の確保のために考慮した内容を、本人に説明する義務があります。派遣元事業主は、派遣労働者が説明を求めたことを理由として不利益な取扱いをしてはなりません。
※派遣元事業主は、派遣先との派遣料金の交渉が派遣労働者の待遇改善にとってきわめて重要であることを踏まえ、交渉に当たることが重要です。
※派遣労働者のキャリアアップの成果を賃金表に反映させることが望まれます。
B通勤手当の支給に関する留意点
派遣元事業主に無期雇用される労働者と有期雇用される派遣労働者との間における、通勤手当の支給に関する労働条件の相違は、労働契約法第20条に基づき、働き方の実態や、その他の事情を考慮して不合理と認められるものであってはなりません。
※有期雇用される派遣労働者の比較対象は、同じ派遣元に無期雇用される労働者です。この無期雇用される労働者には、いわゆる正社員や、無期雇用の派遣労働者など、すべての無期雇用の労働者が含まれます。
(2)派遣先が講ずべき措置
@賃金水準の情報提供の配慮義務
派遣先は、派遣元事業主が派遣労働者の賃金を適切に決定できるよう、必要な情報を提供するよう配慮しなければなりません。必要な情報には、例えば以下のものが挙げられます。

・派遣労働者と同種の業務に従事する派遣先の労働者の賃金水準
・派遣労働者と同種の業務に従事する一般の労働者の賃金水準(賃金相場)
・派遣労働者と同種の業務に従事する派遣先の労働者の募集時の求人条件等

A教育訓練の実施に関する配慮義務
派遣先は、派遣先の労働者に対し業務と密接に関連した教育訓練を実施する場合、派遣元事業主から求めがあったときは、派遣元事業主で実施可能な場合を除き、派遣労働者に対してもこれを実施するよう配慮しなければなりません。
B福利厚生施設の利用に関する配慮義務
派遣先は、派遣先の労働者が利用する以下の福利厚生施設については、派遣労働者に対しても利用の機会を与えるよう配慮しなければなりません。

・給食施設
・休憩室
・更衣室

C派遣料金の額の決定に関する努力義務
派遣先は、派遣料金の額の決定に当たっては、派遣労働者の就業実態や労働市場の状況等を勘案し、派遣労働者の賃金水準が、派遣先で同種の業務に従事する労働者の賃金水準と均衡の図られたものとなるよう努めなければなりません。また、派遣先は、労働者派遣契約を更新する際の派遣料金の額の決定に当たっては、就業の実態や労働市場の状況等に加え、業務内容等や要求する技術水準の 変化を勘案するよう努めなければなりません。

 

Ⅷ.派遣就業の終了にあたって

(1)労働契約申込みみなし制度
派遣先が以下の違法派遣を受け入れた場合、その時点で、派遣先から派遣元事業主との労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約が申し込まれたものとみなされます。派遣労働者が承諾した時点で労働契約が成立します。(派遣先が違法派遣に該当することを知らず、かつ、知らなかったことに過失がなかったときを除きます。)

対象となる違法派遣
@労働者派遣の禁止業務に従事させた場合
A無許可の事業主から労働者派遣を受け入れた場合
B事業所単位または個人単位の期間制限に違反して労働者派遣を受け入れた場合(注1)
Cいわゆる偽装請負の場合

(注1)派遣元事業主は、派遣労働者に対して就業条件などを明示する際に、期間制限違反が労働契約申込みみなし制度の対象となることも明示しなければなりません。
(2)派遣契約が中途解除された場合
派遣契約と労働契約は別であり、派遣契約が解除されたからといって、即座に派遣労働者 を解雇できるものではありません。派遣元事業主は、派遣先と連携して派遣先の関連会社での就業のあっせんを受ける、派遣元事業主において他の派遣先を確保するなど、派遣労働者の新たな就業機会の確保が必要です。新たな就業機会を確保できないときは、まず休業などを行い、雇用の維持を図ることが必要です。

解雇について

(1)期間の定めのない労働契約の場合、権利の濫用にあたる解雇は、労働契約法第16条により無効となります。また、期間を定めないで雇用されている派遣労働者について、労働者派遣の終了のみを理由として解雇することは許可取消しなどの対象となり得ます。
(2)有期労働契約の場合、労働契約法第17条の「やむを得ない事由」がある場合でなければ、契約期間中の解雇はできません。期間の定めのない労働契約の場合よりも、解雇の有効性は厳しく判断されます。また、派遣先との間の派遣契約が中途解除された場合でも、そのことが直ちに派遣元事業主の「やむを得ない事由」に該当するものではないことに注意してください。
なお、やむを得ず解雇する場合であっても、以下のような手続きが必要となります。
@解雇は少なくとも30日前までの予告が必要です。予告できない場合には、解雇予告手当を支払う必要があります。(2か月以内の有期労働契約の派遣労働者などには適用されません)
A労働契約期間の満了に伴い、派遣元事業主が、派遣労働者との有期労働契約を更新しない(雇止めをする)場合には、30日前までの予告が必要です。(契約を3回以上更新している場合や、雇入れから1年を超えている場合に限ります。更新しないことを明示している場合は除きます)

また、有期雇用派遣労働者について、有期雇用派遣労働者との労働契約が継続している場合、労働者派遣の終了のみを理由として解雇することは許可取消しなどの対象となり得ます。

 

Ⅸ.労働者派遣業の許可要件

<労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律>

(許可の基準等)
第7条 厚生労働大臣は、第五条第一項の許可の申請が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
1 当該事業が専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として行われるもの(雇用の機会の確保が特に困難であると認められる労働者の雇用の継続等を図るために必要であると認められる場合として厚生労働省令で定める場合において行われるものを除く。)でないこと。
2 申請者が、当該事業の派遣労働者に係る雇用管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして厚生労働省令で定める基準に適合するものであること。
3 個人情報(個人に関する情報であつて、特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。以下同じ。)を適正に管理し、及び派遣労働者等の秘密を守るために必要な措置が講じられていること。
4 前2号に掲げるもののほか、申請者が、当該事業を的確に遂行するに足りる能力を有するものであること。
(以下、略)

以下の(1)から(4)までのすべての要件に適合していると認められなければ、労働者派遣事業の許可を受けることはできません。
(1)法第7条第1項第1号の要件
(当該事業が専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として行われるものでないこと。)
@当該要件を満たすためには、法第48条第2項の勧告の対象とならないこと、すなわち、当該事業が専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として行われるもの(雇用の機会の確保が特に困難であると認められる労働者の雇用の継続等を図るために必要であると認められる場合として厚生労働省令で定める場合において行われるものを除 く。)でないことが必要である。
A「専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的とする」とは、特定の者に対してのみ当該労働者派遣を行うことを目的として事業運営を行っているものであって、それ以外の者に対して労働者派遣を行うことを目的としていない場合である。
B「厚生労働省令で定める場合」とは、当該労働者派遣事業を行う派遣元事業主が雇用する派遣労働者のうち、10分の3以上の者が60歳以上の者(他の事業主の事業所を60歳以上の定年により退職した後雇い入れられた者に限る。)である場合である。
Cなお、「専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として行うものではないこと」を、労働者派遣事業の許可条件として付することに留意すること。
(2)法第7条第1項第2号の要件
(申請者が当該事業の派遣労働者に係る雇用管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして厚生労働省令で定める基準に適合するものであること 。)
「厚生労働省令で定める基準に適合するもの」とは、
@派遣労働者のキャリアの形成を支援する制度(厚生労働大臣が定める基準を満たすものに限る。)を有すること(「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則第1条の4第1号の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準」参照)
A@のほか、派遣労働者に係る雇用管理を適正に行うための体制が整備されていることの2点である(則第1条の4)。
@派遣労働者のキャリアの形成を支援する制度の内容に関する判断
派遣元事業主は、派遣労働者のキャリア形成を行うために、次のA、B、C、D及びEを満たすキャリア形成支援制度を有しなければならない。
A.派遣労働者のキャリア形成を念頭に置いた段階的かつ体系的な教育訓練の実施計画を定めていること。
当該訓練計画は、以下の要件をすべて満たしていること。
(a) 教育訓練計画の内容の判断
@ 実施する教育訓練がその雇用するすべての派遣労働者を対象としたものであること。
ただし、実際の教育訓練の受講にあたり、以下の者については、当該教育訓練は受講済みであるとして取り扱うことができる。
(@) 過去に同内容の教育訓練を受けたことが確認できる者
(A) 当該業務に関する資格を有している等、明らかに十分な能力を有している者なお、受講済みとして取り扱うことができる派遣労働者であっても、当該派遣労働者が当該教育訓練の受講を希望する場合は、受講させることが望ましい。
A 実施する教育訓練が有給かつ無償で行われるものであること。
教育訓練の受講時間を労働時間として扱い、相当する賃金を支払うことを原則とする。ただし、派遣元事業主において時間を管理した訓練を実施することが困難であることに合理的な理由がある場合(例えば、派遣元事業所と派遣先の事業所との距離が非常に遠く終業後に訓練を行うことが困難である場合であって、eラーニングの設備もない場合)については、キャリアアップに係る自主教材を渡す等の措置を講ずることとしても差し支えないが、その場合は、当該教材の学習に必要とされる時間数に見合った手当を支払うものであること。また、これらの取扱は就業規則又は労働契約等に規定することとする。なお、派遣労働者が段階的かつ体系的な教育訓練を受講するためにかかる交通費については、派遣先との間の交通費より高くなる場合は派遣元事業主において負担すべきものであること。
B 実施する教育訓練が派遣労働者のキャリアアップに資する内容のものであること。
教育訓練の内容は、派遣元事業主が一義的に定めるものであるが、派遣労働者としてより高度な業務に従事すること、派遣としてのキャリアを通じて正社員として雇用されることを目的としている等、キャリアアップに資するものであること。具体的に資する理由は、キャリア形成支援制度に関する計画書(様式第3号-2)において記述すること。複数の訓練コースを設けることも可能であり、訓練内容によって対象者が異なっても差し支えない。なお、ヨガ教室や趣味的な英会話教室、面接対策とは異なるメイクアップ教室のような、派遣労働者の福利厚生を目的とした明らかにキャ リア形成に無関係なものは含まれない。派遣元事業主は、当該教育訓練計画についてキャリアアップに資する内容であることを説明できなければならない。
C 派遣労働者として雇用するにあたり実施する教育訓練が含まれたものであること。
訓練内容に、入職時に行う訓練が含まれていること。短期雇用の者であっても当該訓練を受講させることができるよう、派遣元事業主と派遣先とが互いに協力することが望ましいこと。
D 無期雇用派遣労働者に対して実施する教育訓練は、長期的なキャリア形成を念頭に置いた内容のものであること。
派遣元事業主は、無期雇用派遣労働者に対する教育訓練計画が長期的なキャリア形成を念頭とする内容であることを説明できなければならない。
(b) 教育訓練の実施形態に関する判断
教育訓練の実施形態は、通常の業務を一時的に離れて行う教育訓練(OFF-JT)のみならず、日常の業務につきながら行う教育訓練(OJT)のうち計画的に行うものを含めていても差し支えない。
B.キャリアコンサルティングの相談窓口を設置していること。
(a) 相談窓口には、担当者が配置されていること。
担当者については、キャリアコンサルタント(有資格者)、キャリアコンサルティングの知見を有する者(職業能力開発推進者、3年以上の人事担当の職務経験がある者等)、又は派遣先との連絡調整を行う営業担当者を配置する必要がある。
(b) 相談窓口は、雇用するすべての派遣労働者が利用できること。
相談窓口については、事務所内に定められた相談ブースを設置することのみならず、電話による相談窓口の設置、e-mailでの相談の受付、専用WEBサイトの相談窓口の設置等により雇用する派遣労働者がキャリアコンサルティングを申し込めるよう、その雇用する派遣労働者に対して周知するとともに、適切な窓口を提供しなければならないこと。
(c) 希望するすべての派遣労働者がキャリアコンサルティングを受けられること。
(d) キャリアコンサルティングは、実施に当たっての規程(事務手引、マニュアル等) に基づいて実施されることが望ましいこと。
なお、キャリアコンサルティングは、必ずしも常時行わなければならないわけではなく、例えば毎週2回定期的に実施することや派遣労働者の希望に応じ随時実施すること等も可能である。また、キャリアコンサルティングを行う場所についても事務所の内外を画一的に指定するものではない。
C.キャリア形成を念頭に置いた派遣先の提供を行う手続が規定されていること。
(a) 派遣労働者のキャリア形成を念頭に置いた派遣先の提供のための事務手引、マニュアル等が整備されていること。
(b) 派遣労働者への派遣先の提供は(a)に基づいて行われるものであること。
D.教育訓練の時期・頻度・時間数等
(a) 派遣労働者全員に対して入職時の教育訓練は必須であること。また、教育訓練は、少なくとも最初の3年間は毎年1回以上の機会の提供が必要であり、その後も、キャリアの節目などの一定の期間ごとにキャリアパスに応じた研修等が用意されていること。
(b) 実施時間数については、フルタイムで1年以上の雇用見込みの派遣労働者一人当たり、少なくとも最初の3年間は、毎年概ね8時間以上の教育訓練の機会の提供が必要であること。
(c) 派遣元事業主は上記の教育訓練計画の実施に当たって、教育訓練を適切に受講できるように就業時間等に配慮しなければならない。なお、派遣元事業主は、派遣先に対して、派遣労働者が教育訓練を受けられるように協力を求めることが望ましいこと。
E.教育訓練計画の周知等
(a) 教育訓練計画の策定に当たっては、派遣労働者との相談や派遣実績等に基づいて策定し、可能な限り派遣労働者の意向に沿ったものとなることが望ましいこと。
(b) 派遣元事業主は教育訓練計画について、派遣労働者として雇用しようとする労働者に対し、労働契約を締結する時までに周知するよう努めること。
(c) 教育訓練計画は事業所に備え付ける等の方法により派遣労働者に周知するとともに、計画に変更があった際にも派遣労働者に周知するよう努めること。
(d) 派遣元事業主は、派遣労働者が良質な派遣元事業主を選択できるように、教育訓練に関する事項等に関する情報として、段階的かつ体系的な教育訓練計画の内容についての情報をインターネットの利用その他適切な方法により提供することが望ましいこと。
(e) 派遣元事業主は、派遣労働者のキャリアアップ措置に関する実施状況等、教育訓練等の情報を管理した資料を労働契約終了後3年間は保存していること。労働契約が更新された場合は、更新された労働契約終了後3年間は保存していること。
(f) キャリア形成支援制度を適正に実施しようとしない者又は経過措置期間中の(旧)特定労働者派遣事業を実施していた者であって、キャリア形成支援制度を有する義務を免れることを目的とした行為を行っており、労働局から指導され、それを是正していない者ではないこと。
A派遣労働者に係る雇用管理を適正に行うための体制整備に関する判断
派遣労働者を雇用する者と指揮命令する者が分離するという特性に鑑み、派遣労働者に対する適切な雇用管理能力を要求することにより、派遣労働者の保護及び雇用の安定を図るため、次のような事項につき判断する。
A.派遣元責任者に関する判断
(a) 派遣元責任者として雇用管理を適正に行い得る者が所定の要件及び手続に従って適切に選任、配置されていること。
※当該要件を満たすためには、次のいずれにも該当することが必要である。
@ 法第36条の規定により、未成年者でなく、法第6条第1号から第8号までに掲げる欠格事由のいずれにも該当しないこと。
A 則第29条で定める要件、手続に従って派遣元責任者の選任がなされていること。
B 住所及び居所が一定しない等生活根拠が不安定な者でないこと。
C 適正な雇用管理を行う上で支障がない健康状態であること。
D 不当に他人の精神、身体及び自由を拘束するおそれのない者であること。
E 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる行為を行うおそれのない者であること。
F 派遣元責任者となり得る者の名義を借用して、許可を得ようとするものでないこと。
G 次のいずれかに該当する者であること。
(@)成年に達した後、3年以上の雇用管理の経験を有する者
この場合において、「雇用管理の経験」とは、人事又は労務の担当者《事業主(法人の場合はその役員)、支店長、工場長その他事業所の長等労働基準法第41条第2号の「監督若しくは管理の地位にある者」を含む。》であったと評価できること、又は労働者派遣事業における派遣労働者若しくは登録者等の労務の担当者であったことをいう。
(A)成年に達した後、職業安定行政又は労働基準行政に3年以上の経験を有する者
(B)成年に達した後、民営職業紹介事業の従事者として3年以上の経験を有する者
(C)成年に達した後、労働者供給事業の従事者として3年以上の経験を有する者
H 厚生労働省告示(平成27年厚生労働省告示第392号)に定められた講習機関が実施する則第29条の2で規定する「派遣元責任者講習」を受講(許可の申請の受理の日前3年以内の受講に限る。)した者であること。
I 外国人にあっては、原則として、入管法別表第一の一及び二の表並びに別表第二の表のいずれかの在留資格を有する者であること。
J 派遣元責任者が苦情処理等の場合に、日帰りで往復できる地域に労働者派遣 を行うものであること。
(b) 派遣元責任者が不在の場合の臨時の職務代行者があらかじめ選任されていること。
B.派遣元事業主に関する判断
派遣元事業主(法人の場合はその役員を含む。)が派遣労働者の福祉の増進を図ることが見込まれる等適正な雇用管理を期待し得るものであること。
※当該要件を満たすためには、次のいずれにも該当することが必要である。
@ 労働保険、社会保険の適用基準を満たす派遣労働者の適正な加入を行うものであること。
A 住所及び居所が一定しない等生活根拠が不安定な者でないこと。
B 不当に他人の精神、身体及び自由を拘束するおそれのない者であること。
C 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる行為を行うおそれのない者であること。
D 派遣元事業主となり得る者の名義を借用して許可を得るものではないこと。
E 外国人にあっては、原則として、入管法別表第一の二の表の「高度専門職第一号ハ」、「高度専門職第二号ハ」及び「経営・管理」若しくは別表第二の表のいずれかの在留資格を有する者、又は資格外活動の許可を受けて派遣元事業主としての活動を行う者であること。なお、海外に在留する派遣元事業主については、この限りではない。
F 派遣労働者に関する就業規則又は労働契約等の記載事項について
・ 無期雇用派遣労働者を労働者派遣契約の終了のみを理由として解雇できる旨の規定がないこと。また、有期雇用派遣労働者についても、労働者派遣契約終了時に労働契約が存続している派遣労働者については、労働者派遣契約の終了のみを理由として解雇できる旨の規定がないこと。
・ 無期雇用派遣労働者又は有期雇用派遣労働者であるが労働契約期間内に労働者派遣契約が終了した派遣労働者について、次の派遣先を見つけられない等、使用者の責に帰すべき事由により休業させた場合には、労働基準法第26条に基づく手当を支払う旨の規定があること。
G 既に事業を行っている者であって、雇用安定措置の義務を免れることを目的とした行為を行っており、労働局から指導され、それを是正していない者ではないこと。
C.教育訓練(キャリア形成支援制度に関するものを除く。)に関する判断
(a) 派遣労働者に対して、労働安全衛生法第59条に基づき実施が義務付けられている安全衛生教育の実施体制を整備していること。
(b) 派遣労働者に対する能力開発体制(適切な教育訓練計画の策定、教育訓練の施設、設備等の整備、教育訓練の実施についての責任者の配置等)を整備していること。
※当該要件を満たすためには、次のいずれにも該当することが必要である。
@ 派遣労働者に係る教育訓練に関する計画が適切に策定されていること。
A 教育訓練を行うに適した施設、設備等が整備され、教育訓練の実施について責任者が配置される等能力開発体制の整備がなされていること。
(c) 法第30条の2に定める教育訓練以外に自主的に実施する教育訓練については、派遣労働者が受講しやすいよう、当該教育訓練に係る派遣労働者の費用負担を実費程度とすること。
(3)法第7条第1項第3号の要件
(個人情報を適正に管理し、派遣労働者等の秘密を守るために必要な措置が講じられていること。)
A.個人情報管理の事業運営に関する判断
@ 派遣労働者となろうとする者及び派遣労働者(ハにおいて「派遣労働者等」という。)の個人情報を適正に管理するための事業運営体制が整備されていること。
(a) 当該要件を満たすためには、次のいずれにも該当し、これを内容に含む個人情報適正管理規程を定めていることが必要である。
@ 派遣労働者等の個人情報を取り扱う事業所内の職員の範囲が明確にされていること。
A 業務上知り得た派遣労働者等に関する個人情報を業務以外の目的で使用したり、他に漏らしたりしないことについて、職員への教育が実施されていること。
B 派遣労働者等から求められた場合の個人情報の開示又は訂正(削除を含む。以下同じ。)の取扱いに関する事項についての規程があり、かつ当該規程について派遣労働者等への周知がなされていること。なお、開示しないこととする個人情報としては、当該個人に対する評価に関する情報が考えられる。
C 個人情報の取扱いに関する苦情の処理に関して、派遣元責任者等を苦情処理の 担当者等取扱責任者を定める等、事業所内の体制が明確にし、苦情を迅速かつ適 切に処理することとされていること。(b) 個人情報適正管理規程については、以下の点に留意するものとする。
@ 派遣元事業主は、(a)の@からCまでに掲げる規定を含む個人情報適正管理規程を作成するとともに、自らこれを遵守し、かつ、その従業者にこれを遵守させなければならないものとする。
A 派遣元事業主は、本人が個人情報の開示又は訂正の求めをしたことを理由として、当該本人に対して不利益な取扱いをしてはならないものとする。ここでいう、「不利益な取扱い」の例示としては本人が個人情報の開示又は訂正の求めをした以後、派遣就業の機会を与えないこと等をいう。
(c)「個人情報の収集、保管及び使用」については、以下の点に留意するものとする。
@ 派遣元事業主は、派遣労働者となろうとする者の登録をする際には当該労働者の希望及び能力に応じた就業の機会の確保を図る範囲内で、派遣労働者として雇用し労働者派遣を行う際には当該派遣労働者の適正な雇用管理を行う目的の範囲内で、派遣労働者等の個人情報(以下ハにおいて単に「個人情報」という。)を収集することとし、次に掲げる個人情報を収集してはならないものとする。ただし 、特別な業務上の必要性が存在することその他業務の目的の達成に必要不可欠であって、収集目的を示して本人から収集する場合はこの限りではない。
(@) 人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項
(A) 思想及び信条
(B) 労働組合への加入状況
・(@)から(B)については、具体的には、例えば次に掲げる事項等が該当する。
(@) 関係
@ 家族の職業、収入、本人の資産等の情報(税金、社会保険の取扱い等労務管理を適切に実施するために必要なもの及び日雇派遣の禁止の例外として認められる場合の収入要件を確認するために必要なものを除く。)
A 容姿、スリーサイズ等差別的評価に繋がる情報
(A) 関係
人生観、生活信条、支持政党、購読新聞・雑誌、愛読書
(B) 関係
労働運動、学生運動、消費者運動その他社会運動に関する情報
・「業務の目的の達成に必要な範囲」については、雇用することを予定する者を登録する段階と、現に雇用する段階では、異なることに留意する必要がある。前者においては、例えば労働者の希望職種、希望勤務地、希望賃金、有する能力・資格など適切な派遣先を選定する上で必要な情報がこれに当たり、後者においては、給与事務や労働・社会保険の手続上必要な情報がこれに当たるものである。
・なお、一部に労働者の銀行口座の暗証番号を派遣元事業主が確認する事例がみられるが、これは通常、「業務の目的の達成に必要な範囲」に含まれるとは解されない。
A 派遣元事業主は、個人情報を収集する際には、本人から直接収集し、又は本人の同意の下で本人以外の者から収集する等適法かつ公正な手段によらなければならないものとする。
・「等」には本人が不特定多数に公表している情報から収集する場合が含まれる 。
B 派遣元事業主は、高等学校若しくは中等教育学校又は中学校若しくは義務教育学校の新規卒業予定者である派遣労働者となろうとする者から応募書類の提出を求めるときは、職業安定局長の定める書類(全国高等学校統一応募用紙又は職業相談票 (乙))により提出を求めるものとする。
・当該応募書類は、新規卒業予定者だけでなく、卒業後1年以内の者についてもこれを利用することが望ましいこと。
C 個人情報の保管又は使用は、収集目的の範囲に限られる。なお、派遣労働者として雇用し労働者派遣を行う際には、労働者派遣事業制度の性質上、派遣元事業主が派遣先に提供することができる派遣労働者の個人情報は、法第35条第1項の規定により派遣先に通知すべき事項のほか、当該派遣労働者の業務遂行能力に関する情報に限られるものであるものとする。ただし、他の保管又は使用の目的を示して本人の同意を得た場合又は他の法律に定めのある場合は、この限りではない。
B.個人情報管理の措置に関する判断
派遣労働者等の個人情報を適正に管理するための措置が講じられていること。
(a) 当該要件を満たすためには、次のいずれにも該当することが必要である。
@ 個人情報を目的に応じ必要な範囲において正確かつ最新のものに保つための措置が講じられていること。
A 個人情報の紛失、破壊及び改ざんを防止するための措置が講じられていること 。
B 派遣労働者等の個人情報を取り扱う事業所内の職員以外の者による派遣労働者等の個人情報へのアクセスを防止するための措置が講じられていること。
C 収集目的に照らして保管する必要がなくなった個人情報を破棄又は削除するための措置が講じられていること。なお、当該措置の対象としては、本人からの破棄や削除の要望があった場合も含むものである。
(b) 「適正管理」については以下の点に留意するものとする。
@ 派遣元事業主は、その保管又は使用に係る個人情報に関し適切な措置((a)の@からCまで)を講ずるとともに、派遣労働者等からの求めに応じ、当該措置の内容を説明しなければならないものとする。A 派遣元事業主等が、派遣労働者等の秘密に該当する個人情報を知り得た場合には、当該個人情報が正当な理由なく他人に知られることのないよう、厳重な管理を行わなければならないものとする。
(4)法第7条第1項第4号の要件
(ロ及びハの他、申請者が当該事業を的確に遂行するに足りる能力を有するものであること。)
@財産的基礎に関する判断(事業主(法人又は個人)単位で判断)
A.許可申請事業主に関する財産的基礎
許可申請事業主についての財産的基礎の要件については以下のとおりとする。
(a) 資産(繰延資産及び営業権を除く。)の総額から負債の総額を控除した額(以下「基準資産額」という。)が2,000万円に当該事業主が労働者派遣事業を行う(ことを予定する)事業所の数を乗じた額以上であること。
・厚生労働省令により提出することとなる貸借対照表又は労働者派遣事業計画書(様式第3号)の「3 資産等の状況」欄により確認する。
・「繰延資産」とは、会社計算規則(平成18年法務省令第13号)第74条第3項第5号に規定する繰延資産をいい、「営業権」とは、無形固定資産の一つである会社計算規則第2編第2章第2節の「のれん」をいう。
(b) (a)の基準資産額が、負債の総額の7分の1以上であること。
(c) 事業資金として自己名義の現金・預金の額が1,500万円に当該事業主が労働者派遣事業を行う(ことを予定する)事業所の数を乗じた額以上であること。
・厚生労働省令により提出することとなる貸借対照表又は労働者派遣事業計画書(様式第3号)の「3 資産等の状況」欄により確認する。
(d) 基準資産額又は自己名義の現金・預金の額が増加する旨の申し立てがあったと きは、公認会計士又は監査法人による監査証明を受けた中間決算又は月次決算による場合に限り、基準資産額、負債の総額及び自己名義の現金・預金の額のいずれについても当該中間決算又は月次決算により確認するものとする。ただし、個人の場合に限り、基準資産額又は自己名義の現金・預金の額が増加する旨の申し立てがあったときは、@市場性のある資産の再販売価格の評価額 、基礎価額を上回る旨の証明があった場合(例えば、固定資産税の評価額証明書等による。)、A提出された預金残高証明書により普通預金、定期預金等の残高を確認できた場合(複数の預金残高証明書を用いる場合は、同一日付のものに限る。)に限り、当該増加後の額を基準資産額又は自己名義の現金・預金の額とする。
A組織的基礎に関する判断
派遣労働者数に応じた派遣元責任者が配置される等組織体制が整備されるとともに、労働者派遣事業に係る指揮命令の系統が明確であり、指揮命令に混乱の生ずるようなものではないこと。
B事業所に関する判断
事業所について、事業に使用し得る面積がおおむね20u以上あるほか、その位置、設備等からみて、労働者派遣事業を行うのに適切であること。
※当該要件を満たすためには、次のいずれにも該当すること。
・風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律で規制する風俗営業や性風俗特殊営業等が密集するなど事業の運営に好ましくない位置にないこと。
・労働者派遣事業に使用し得る面積がおおむね20u以上あること。
C適正な事業運営に関する判断
労働者派遣事業を当該事業以外の会員の獲得、組織の拡大、宣伝等他の目的の手段として利用しないこと、登録に際しいかなる名義であっても手数料に相当するものを徴収しないこと等法の趣旨に沿った適切な事業運営を行うものであり、次のいずれにも該当すること。
(a) 労働者派遣事業において事業停止命令を受けた者が、当該停止期間中に、許可を受けようとするものではないこと。
(b) 法人にあっては、その役員が、個人事業主として労働者派遣事業について事業停止命令を受け、当該停止期間を経過しない者ではないこと。
(c) 労働者派遣事業を当該事業以外の会員の獲得、組織の拡大、宣伝等他の目的の手段として利用するものではないこと。許可申請関係書類として提出された定款又は寄附行為及び登記事項証明書については、その目的の中に「労働者派遣事業を行う」旨の記載があることが望ましいが、当該事業主の行う事業の目的中の他の項目において労働者派遣事業を行うと解釈される場合においては、労働者派遣事業を行う旨の明示的な記載は要しないものであること。なお、定款又は寄附行為及び登記事項証明書の目的の中に適用除外業務について労働 者派遣事業を行う旨の記載がある場合については、そのままでは許可ができないもので あるので留意すること。 d 登録制度を採用している場合において、登録に際し、いかなる名義であっても手数料 に相当するものを徴収するものではないこと。
(e) 自己の名義をもって、他人に労働者派遣事業を行わせるために、許可を得ようとするものではないこと。
(f) 法第25条の規定の趣旨に鑑み、人事労務管理業務のうち、派遣先における団体交渉又は労働基準法に規定する協定の締結等のための労使協議の際に使用者側の直接当事者として行う業務について労働者派遣を行おうとするものではないこと。なお、当該業務について労働者派遣を行おうとするものではないことを労働者派遣事業の許可条件として付するものであることに留意すること。

 

Ⅹ.欠格事由

@禁固以上の刑に処せられ、又は労働法関係やその他の法律に違反し、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過していない者
A心身の故障により労働者派遣事業を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
B破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
C法第14条第1項(第1号を除く。)の規定により労働者派遣事業の許可を取り消され、当該取消しの日から起算して5年を経過しない者
D法第14条第1項の規定により労働者派遣事業の許可を取り消された者が法人である場合において、当該取消しの処分を受ける原因となつた事項が発生した当時現に当該法人の役員であつた者で、当該取消しの日から起算して5年を経過しないもの
E法第14条第1項の規定による労働者派遣事業の許可の取消しの処分に係る行政手続法第15条の規定による通知があった日から当該処分をする日又は処分をしないことを決定する日までの間に法第13条第1項の規定による労働者派遣事業の廃止の届出をした者で、当該届出の日から起算して5年を経過しないもの
F法第6条第1項第7号に規定する期間内に第13条第1項の規定による労働者派遣事業の廃止の届出をした者が法人である場合において、同号の通知の日前60日以内に当該法人の役員であつた者で、当該届出の日から起算して5年を経過しないもの
G暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
H営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者であって、その法定代理人が法第6条第1項第1号〜9号又は第11号〜第13号のいずれかに該当するもの
I法人であって、その役員のうちに法第6条第1項第1号〜第10号のいずれかに該当する者があるもの
J暴力団員等がその事業活動を支配する者
K暴力団員等をその業務に従事させ、又はその業務の補助者として使用するおそれのある者

 

Ⅺ.申請手続

1.許可申請の手続
(1) 申請方法
・労働者派遣事業を行おうとする場合は、下記に掲げる書類を事業主の主たる事務所を管轄する都道府県労働局(以下「事業主管轄労働局」という。)に提出してください。申請は、事業主単位(会社単位)で行います。
・許可申請は、事業開始予定時期のおおむね2〜3か月前までに行う必要があります。申請を希望する場合、お早めに事業主管轄労働局にご相談ください。
・許可を受けるためには、欠格事由(法第6条)に該当せず、許可基準(法第7条第1項)を満たす必要があります。
・申請に先立ち、派遣元責任者が派遣元責任者講習を受講しておく必要があります。この講習は、派遣元事業所の雇用管理及び事業運営の適正化に資することを目的とするものです。講習は、厚生労働省告示(平成27年厚生労働省告示第392号)に定められた講習機関が実施しています。
(2) 提出書類
@ 労働者派遣事業許可申請書(様式第1号)3通(正本1通、写し2通)
A 労働者派遣事業計画書(様式第3号第3号-2及び様式第3号-3)3通(正本1通、写し2通)※(注)様式第3号-3は、派遣労働者のうち、雇用保険又は健康保険・厚生年金保険の未加入者がいる場合にのみ提出)
B 次表に掲げる添付書類2通(正本1通、写し1通)
法人の場合
○定款又は寄附行為
○登記事項証明書
○役員*3の住民票(本籍地の記載のあるもの及び番号法の規定に基づく個人番号の記載のないもの)の写し*1及び履歴書*2
○最近の事業年度における貸借対照表、損益計算書及び株主資本等変動計算書
○最近の事業年度における法人税の確定申告書の写し(納税地の所轄税務署の受付印のあるもの申告書の別表1(1)及び4は必ず必要)
○法人税の納税証明書(国税通則法施行規則別紙第8号様式(その2)による最近の事 業年度における所得金額に関するもの)
個人の場合
○住民票(本籍地の記載のあるもの及び番号法の規定に基づく個人番号の記載のないもの)の写し*1及び履歴書*2
○最近の納税期における所得税の確定申告書の写し(納税地の所轄税務署の受付印のあるもの)
○納税証明書(国税通則法施行規則別紙第8号様式(その2)による最近の納税期における金額に関するもの)
○貸借対照表及び損益計算書(所得税青色申告決算書(一般用)の写し)(青色申告の場合)
○不動産の登記事項証明書及び固定資産税評価額証明書(白色申告又は青色申告で簡易な記載事項の損益計算書作成の場合)
○預金残高証明書(納税期末日のもの)
法人・個人共通
○事業所の使用権を証する書類(不動産の登記事項証明書又は不動産賃貸借(使用貸借)契約書の写し)(転貸借の場合は、その所有者の転貸借に係る同意書その他権利関係を証する書類を含む) ※
○就業規則又は労働契約の以下の該当箇所の写し※
・教育訓練の受講時間を労働時間として扱い、相当する賃金を支払うことを原則とする取扱いを規定した部分※
・無期雇用派遣労働者を労働者派遣契約の終了のみを理由として解雇しないことを証する書類。また、有期雇用派遣労働者についても、労働者派遣契約終了時に労働契約が存続している派遣労働者については、労働者派遣契約の終了のみを理由として解雇しないことを証する書類※
・労働者派遣契約の終了に関する事項、変更に関する事項及び解雇に関する事項について規定した就業規則又は労働契約の該当箇所の写し等※
・無期雇用派遣労働者又は有期雇用派遣労働者であるが労働契約期間内に労働者派遣 契約が終了した者について、次の派遣先を見つけられない等、使用者の責に帰すべき事由により休業させた場合には、労働基準法第26条に基づく手当を支払うことを規定した部分※
○派遣労働者のキャリア形成を念頭においた派遣先の提供のための事務手引、マニュアル等又はその概要の該当箇所の写し※
○派遣元責任者の住民票の写し(本籍地の記載のあるもの及び番号法の規定に基づく個人番号の記載のないもの)*1及び履歴書*2並びに派遣元責任者講習受講証明書の写し(許可の申請の受理日前3年以内の受講日のものに限る)
○個人情報適正管理規程
〜留意事項〜
・※印の書類は事業所ごとに提出しなければなりません。
・*1:住民票の写しの交付を市区町村長に請求する際は、必ず請求事由として、労働者派遣事業実施のために必要である旨を記載してください。なお、外国人の方は、中長期在留者は国籍等及び在留資格を記載した住民票の写しを、特別永住者は国籍等及び特別永住者である旨を記載した住民票の写しを、3月以下の在留期間が決定された短期在留者は旅券その他の身分を証する書類の写しを提出する必要があります。また、本籍地の記載のあるもの及び番号法の規定に基づく個人番号の 記載のないものを請求するようにしてください。
・*2:履歴書には、氏名、生年月日、現住所、職歴(雇用管理歴がある場合は、雇用管理歴を記載してください。)、役職員への就任解任の状況、賞罰について記載してください。
・*3:役員が未成年者で労働者派遣事業に関し営業の許可を受けていない場合は、その法定代理人の住民票の写し(本籍地の記載のあるもの及び番号法の規定に基づく個人番号の記載のないもの)及び履歴書を提出してください。また、法定代理人が法人の場合は、これに加え法定代理人の定款又は寄付行為、登記事項証明書も必要となります。なお、営業の許可を受けている場合は、その法定代理人の許可を受けたことを証する書面(未成年者に係る登記事項証明書)を提出してください。
(3) 添付書類の省略
次のような場合は、添付書類を省略することができます。(旧)特定労働者派遣元事業主が労働者派遣事業の許可申請を行う場合には、次に掲げる書類を省略することができます。
法人の場合
○定款又は寄附行為
○登記事項証明書
○役員の住民票の写し及び履歴書
個人の場合
○住民票の写し及び履歴書
(4) 参考資料(自己チェックシート等)
事業主は、許可申請にあたって以下の参考資料を作成・準備し、許可申請関係書類とあわせて提出してください。
@ 自己チェックシート
A 企業パンフレット等事業内容が確認できるもの(設立直後等で作成していない場合を除 く。)
B 労働者名簿(申請月の前月末現在(前月末で把握が困難な場合は前々月末現在)のもので、派遣労働者を含む全労働者分)(ただし、(8)許可の基準のニの(イ)のbによる小規模派 遣元事業主への暫定的な配慮措置による申請を行わない事業主は除く。)
C (2)提出書類のうち就業規則の該当箇所の写しを添付する場合、事業主の主たる事務所の所在地を管轄する労働基準監督署の受理印がある該当ページの写しを併せて提出してください。※
(注)※印の書類は事業所ごとに提出してください。